第7章 なな
木漏れ日に反射して、君の顔が触れていた場所がきらりと光る。
「ごめんな…」
君の温もりを思い出すようにそっとキスすれば甘く、夢ではなかったように感じた。
花の蜜のように、君の涙は甘かった。
俺は体を起こし、そっとその枝から降りる。
「また来る。…だから、また姿を見せてくれ」
風が戦いで、まるで返事をしているみたいだ。
本丸の仲間は、まだ夢の中のようだ。
昨日までの騒がしさがない。
各部屋から寝息が聞こえて、廊下には俺の足音だけが響く。
与えられた部屋の前を通り過ぎ、昨日宴会が行われた大広間に顔を出せば、そのまま酔い潰れた奴らが数名。
「…まったく、気が緩みすぎじゃないか?敵襲が来たらどうするんだよ」
その辺に散らばったものを少しずつ片付け始める。
床に寝転ぶものたちを踏まないようにしながら、まずはゴミを集めていく。
もっと飲みたいだの、まだ食えるだの、夢の中でも宴会をつづけてるのか、俺の歓迎会だと言うのに主役を無視して。
などと、笑ってしまう。
「ふっ、」
その時戸が開いてそちらに目をやれば、どくどくと静かに心臓が脈を早めた。
流れ込んできた憎悪………は、言い過ぎか。
「あ………えっと、おはよう…ございます」
最悪だ。
気分は急降下、せっかくいい気持ちで目が覚めたというのに。
また来るって言ったが、その"また"はすぐになりそうだな。
後できみに話をきいてもらおう、俺の話を聞くのは得意なんだろう?
…なんて。
おどおどと、俺に声をかけたのはこの本丸の審神者。
「おはよう」
気分を害して、この身を折られてもいやだからな。
グッと繕って、目も合わせずにそう答える。
「片付け、ありがとうございます。その、主役だったのに」
「きみのためじゃない」
「…それでも、ありがとうございます」
「…」
それには答えず、手を動かす。
すると、その審神者も片付けを始める。
「…ここはいい。俺がやるから、他にもあるだろう?仕事なら。これだけ広い本丸では」
「まぁ」
「俺1人で十分。さぁ行った行った」
「…じゃあ、お願いします」
そっとモノを置く音がする。
そしてそのうち部屋を出ていく音も。
「…なにか、文句でも?初期刀殿」