第7章 なな
それならあまりに面白みがないと、貞坊の言葉を聞いて思った。
俺たちの使命は斬ることであり歴史を守ることであり、などとつまらないことを言うつもりもないが、恋愛ごっこはごめんだと少し距離を置こうとその日決めた。
貞坊が案内をしてくれる中で、目に止まったのは大きな木。桜だろうかと予想をつけて、何かあったらとまり木にしようと頭の片隅に置いた。
「本丸の案内はこんなもんかな」
「ありがとうな」
「おう!」
貞坊の案内の後、顕現したばかりで疲れているだろうと、その日の出陣はなかった。
いかにも人間らしい考えだと呆れたくらいにして、俺はあてがわれた自分の部屋で休む。
伊達の刀と同室、これもまたいかにも人間らしいと思った。
まぁ同室の奴と言ったって、寝る時に顔を合わせるくらいだろうし、誰であろうと一緒だ。
三条の奴らは少しめんどくさいし、遠慮したいが。
まぁ、結果伊達の刀達だしそこに対して言うことはない。
呼び出しが来るまで、暇だとその場に寝転ぶ。
穏やかすぎて吐き気がする。
落ち着かなくて、せっかく案内されたと言うのに、部屋を出る。
貞坊は案内が終わると手伝いがあるからと、俺を1人その部屋に置いて行った。
今夜は宴だから楽しみにしておけと言うことらしい。
部屋を出てフラフラとしていると、たどり着いたのは先ほど惹かれた桜の木の前。
そっと触れれば少しだけ温かみを感じたような気がして、心地いい。
「なぁお前、よろしく頼む」
ボソッとつぶやいて、その木に登る。
1番太い枝に身を任せばなんとなく安心して、枝葉が揺れるその音に目を閉じた。
「お前を懐かしいと思うのは何故だろうな」
その問いに答えるものもいないのに、それだからいいと思うのは捻くれているのだろう。
結局貞坊が探しに来るまで俺はその場所で過ごした。
部屋で過ごすよりもずっと、なぜかここにいる方が楽だった。
と言っても、部屋で過ごしたのは10分にも満たないだろうが。
「鶴さん、てっきり部屋にいると思った」
「1人でいるには退屈でな、ちょうどいいとまり木があったから」
「落っこちないようにな」
その日の宴は夜が明けるまでつづいた。
主役というのに俺は酔いを覚ます体で、途中で抜け出したが殆どの奴らは酔っていたし気付かれないだろう。