第6章 ろく
例えば、久しぶりとか。
例えば、会えて嬉しいとか。
例の口上じゃなく、そんなものなら納得できたんだろうか。
言葉をなくした私に、貴方は顔をキョトンとさせていた。
あの頃よりも少しだけ幼く見えるのは、極めていないせいか。
「逢いたかったわ、貴方に」
やっと絞り出せた言葉に、"俺もだよ"なんて言葉をくれたら100点をあげた。
「ん?」
私のあの頃から今までの人生の大半を、貴方を思う気持ちで占めていたのに。
どうして不思議そうな顔。
私の姿が違うから、だから気づかなかったのかしら?
それならまだ、良かったわ。
でも、ここに顕現されても貴方は私が欲しい言葉をくれない。
別物、全くの別物。
「主!」
「…」
「あれ?新刃?…って、鶴丸国永??」
新撰組の刀達と戯れていたはずの清光と安定がまた私のそばにきていて、その手には宣言した通りのトッピングがしてある。
「よぉ。キミたちは?」
「俺は加州清光、で、こっちが大和守安定」
「ねぇ、主良かったじゃん。片想い、叶ったんじゃない?」
「片想い?」
私を見つめる金の瞳が、少しだけ呆れを含んでいたように見えて、泣きたくなる。
「…と、刀帳で見た時に」
…嘘。だから、続かない。
続けられない。
「主、鶴さんに本丸案内してきてもいいか??」
空気を読んでか、それは定かじゃないけれど、そう提案した貞に少しだけ胸を撫で下ろした。
「もちろん」
口角を上げるのってしんどいのね。
直接酷い言葉を浴びせられたわけでも、冷めた態度を取られたわけでもないのに。
しごく普通な対応を貴方はしていただけなのに。
ままならないわ、やっぱり。
胸が張り裂けそうだもの。
「主?」
「ん?」
「安定がごめん」
「へ?僕なんかした??」
「もう、そういうとこだぞ」
「ふふっ、清光は心配性ね。驚いたわ、みんなの刀身を見た時も驚いたのよ。人の身を得た姿を初めて見た時もね。
…あんなに真っ白なのね。消えちゃいそうだわ」
「見惚れてただけ?」
「そうね、片想いだもの」
「そ。あ、主のブリュレとアイスのトッピングだっけ??国広は??」
「俺はそのままでいい」
「了解。じゃあ、俺たちのトッピングのおかわりついでに主のもしてきてあげる。安定、行くぞ」