第6章 ろく
安定の指摘にグッとくる。
「こら、安定言い過ぎ。俺だってそこまで言ってない」
「思ってはいたってこと?」
「…」
「図星じゃん。ねぇ、主、もういいんじゃない?そろそろ、僕にしとけば?」
「馬鹿、安定より俺の方がいいよねー、主?」
赤と青のやりとりを聞きながら、そんなに簡単な思いならいいのにって思った。
こびりついた焦げみたいに、未練だけが残るこの想いを綺麗さっぱり忘れられたら本当に、どれだけ良いんだろうか。
「主黙っちゃったじゃん」
「清光もフォローできてなかっただろ」
「ねぇ、主。ごめん」
「…、あ。ごめん。聞いてなかった、焼き芋のトッピング考えてて」
流石にこんな誤魔化し方、誤魔化されてくれないかと思ったのに、清光は少しだけ安心したように笑って、話を合わせてくれた。
「…俺、バニラアイスにしようかな」
「じゃあ、僕、燭台切に頼んでぶりゅれにしてもらお」
「ずるいぞ!」
「じゃあ、私どっちも」
本質を見抜いて真っ直ぐぶつかってくる安定と、見抜いても汲み取って対処してくれるのが清光。どちらも、もう欠けてはいけない大切な2振り。
この本丸で過ごす時間の方が、貴方と過ごした瞬きの間よりも長いのに、安定の言う通りどうして片想いを続けてるんだろう。
…そんなの。
もうわかりきってる。
貴方が、1人だった私を見つけてくれたから。
連れ出してくれたから。
約束をくれたから。
…神様。
私だけの神様。
どうして意地悪なの。
ねぇ、早く来てよ。
「主、焼けたぞ」
「えぇ、ありがとう」
アツアツの芋を頬張ろうとした時、焦ったような足音が聞こえてきて、その方向に視線を向ける。
「主!!あるじ!!」
「今日の鍛刀当番は太鼓鐘だったか」
国広の言葉にうなづきながら、貞ちゃんの後ろに見えた影に受け取ったものが手から滑り落ちる。
国広は土に触れる前にそれをキャッチしていて、謝る前に私は言葉をなくした。
…あぁ。
あぁ…っ、どれだけこの日を待ち望んでいたか。
貴方の姿を見てから、スロモーションのような瞬間だった。
違うモノだと分かっていても、心は理解していなかったらしい。
なりふり構わずその場から駆け出して、貴方の前に来た時。
貴方の言葉を聞いて、我に帰った。