第6章 ろく
「力を使っても、寝れば回復するもの。みんなはそういうわけにはいかないでしょ、自然治癒しないし。みんなが怪我をするのは、私の力不足」
「傲慢だな」
「今知ったの?」
「いや、出会った時から知っている」
「でしょ」
貴方が来ないまま、季節が過ぎる。
春が終わり、夏が来て、もう秋だ。
来年の春には会えるのかな。
そんなこと思っても、鬼が笑うだけだと言い聞かせて、考えるのを辞めた。
「国広は、慣れた?」
「何にだ?」
「人の身」
「そうだな。特もついたしな」
「そ。頼もしい」
「…だが、心には慣れないな」
「それは、そうだよ。慣れないよ、私も。ままならなくて、いつも困る」
「そうか。…主、暇ならその袋を広げてくれないか」
「主を使うの?」
なんていいつつ、置いてあるビニール袋を開く。
「ダメか?」
「人遣いが荒い神さまだ」
軽口を叩いていると、ふんわりと国広が笑うからいつも余計なことを長々と考えなくて済む。
「国広、コレで焼き芋する?」
「ありだな」
「じゃあ、桑名からお芋もらってこなきゃ」
袋にたくさん詰まった落ち葉を見てるだけで、お腹が空いてくる。
匂いに釣られて、貴方が顕現すればいいのになんて。
「主ー!いたいた!!聞いてよ!!」
「清光、抜け駆けするなよな!」
「騒がしいのが来たな」
赤と青、仲良く喧嘩しながら廊下をかけてくる。
国広が少し面倒くさそうな顔をする。
安定が顕現するまで鍛刀の時はひっつき虫だった清光が、今ではもうすっかり、私離れしていると言ったらまたひっつき虫に戻りそうなので黙っておく。
「どうかしたの?」
「清光が!」
「違うだろ!安定が!!」
「2人とも、主が困ってるぞ」
「「国広は黙ってて」」
「息ぴったりね」
「主まで」
ねぇ、騒がしい本丸でしょう?
自分で言うけど和気藹々としてて、仲のいい本丸なのよ。
清光と安定はたまにしょっちゅう言い合いはしてるけど。
猫のじゃれあいみたいで可愛いから、見守ることにしている。
退屈はしないと思うわ。
「ねぇ、主聞いてる??」
「もう一度お願いできるかしら?」
「もう!次はちゃんと聞いてよね!!」
あの頃の本丸に近付いたら、貴方は来てくれるのかしら?
「主、そろそろじゃないか?」