第6章 ろく
「じゃあ、行ってくる」
「気をつけて、どうか」
「あぁ」
「すぐ帰ってくるよ、主」
「行ってきます」
3人を祈るような気持ちで見送った。
気合を入れ直すように、頬をペチンと両手で挟む。
鍛刀の合間に書類を整理しようと、部屋に向かへば刀鍛冶の妖精さんが火入れをしているところだった。
札を渡すと丁寧に受け取ってくれて、今日は10連を2回。余った時間で少しずつ顕現させようと相談する。
大仕事になりそうで腕が鳴ると、そう言ってそうな仕草が可愛らしく、クスッと笑ってしまった。
後で差し入れでも持ってくるわと伝えると嬉しそうだったわ。
大したものは作れないけれど、戻ってきたみんなを労うためにもと、厨で少し仕込みをした後、書類整理をする。
授業で散々やった筈なのに、仕事となると心持ちが変わって少し緊張したわ。
深く読み込んでサインをする。その繰り返し、段々と目がしょぼしょぼする。
それでも読み飛ばしたりしないのは、それを怠った時にこちらに不利になるような事があったら嫌だから。
国広は戦うために、護るためにあるって言ったわ。それなら私も、物理では戦えなくても、人の身なら避けては通れない理不尽からみんなを守るために使えるものは使うし、そのために沢山頭を使うと、口にせずとも意気込んだ。
いくら頭が痛くなるくらい多い書類作業だとしてもね!
集中していると、すぐに時間が経った。
出迎えようと思ったのに、それすらも忘れて。
「…じ!主!!」
「っ!!」
パソコンの後ろからひょっこり顔を出した、清光の近さに驚く。
「ただいま!」
「清光、…小夜も国広もおかえりなさい。出迎えられなくてごめんなさいね。怪我は?」
「ない」
「そう、良かった。みんなお昼は?」
「お昼?」
「ご飯食べたかしら?」
「…」
「食べてないのね、どうして…って、そっか伝えてなかったわ。人は1日3回食事をとるの。朝昼晩ってね。明日からはちゃんと食事を取って。…忘れてたわ。おやつも仕込んだのに」
「主、俺たちは食べなくても大丈夫なんだけど、主こそ食べたの?」
「…あんた、食べてないだろ。飲み物すら飲んでないんじゃないか?人なのに」
「私は仕事があったから」
そういうと、国広に手元にあった書類を没収される。
「主、休も。こんな時間だけど」