第6章 ろく
清光は少し教えると、すぐに理解してそれをモノにしていく。
包丁で具材を切る時の、食材を支える手だってすぐに猫の手にしている。
「清光すごいね」
「俺すごいの?」
「ええ」
「へへっいやぁ、初めて見た時はどうなることかと思ったけど、国広と普通の関係で良かったよ。安心安心」
私の隣でニコニコの清光は、私を真似て国広を国広と呼ぶ。
「ふふ、そうよ。何でもないって言ったでしょう?それに、私想い人いるのよ」
「え…」
「でも、私の清光もとっても大好きよ」
「ふーん」
満更でもなさそうな清光は、また手を動かし始めた。
「どんな奴なの?」
「んー。私を見つけてくれたモノよ…多分もう会えないけれど」
「会えないの?」
「ええ。私の前で灰になって消えちゃったのよ」
「それって」
「本霊に還ったって言ったら分かるかしら?」
「刀剣男士?」
「私が私じゃなかった頃の話よ」
「んー。わかんね。頓知話みたいなこと?」
「そのうちね。一度に知ったら面白くないでしょう?ジンセイには驚きが必要なのよ」
「そっかぁ」
納得してくれたであろう、清光にホッとしたわ。
まさか、こんなに深掘りされると思ってなかったから。
なんて、本当かしら?
自分でも分からないわ、何がしたいのか。
「いい匂いだな」
暖簾から顔を出したのは、私の初期刀。
…と、その後ろに小夜。
「味も美味しいと思うわ。清光が手伝ってくれたんだもの」
「えへへ」
「器用なんだな」
「まぁね、人並みには。人じゃないけど」
「僕は器用な方じゃないので、羨ましいです」
「ふふっ、みんな仲良くなれそうでよかったわ。さ、運ぶの手伝ってちょうだい」
「あぁ」
まだ4人しかいなくて、始まったばかりの本丸。
貴方に会いたくて始めた本丸。
貴方はここにいないのに、もう既にこの本丸が安心できる場所になりつつあることに、少しだけくすぐったさを感じている。
「主、挨拶して」
「え?」
「何でもいいから」
「あ、…んー。じゃあ…、手を合わせてください。全ての命に感謝して、美味しいご飯いただきます」
「「「いただきます」」」
こんなに賑やかな食卓って、いつぶりかしら?
私は参加したことあったかしら?
施設でいた時でさえ、寂しさを感じていたのに。