第6章 ろく
きゃー!!!!!
「敵襲か?!」
悲鳴と、寝巻きのまま本体を持った国広。
私は寝ぼけ眼で、その光景を見ている。
「お前なにしちゃってんの?!ねぇ!お前何しちゃってんの?!」
黒い髪に、黒地に赤の服。
確か…。
「清光?」
「え??あ!!そうそう!俺、加州清光。川の下の子、河原の子ってね。
扱いにくいが性能はピカイチ、いつでも使いこなせて可愛がってくれて、あと着飾ってくれる人大募集してるよ」
清光は国広の肩越しにひょっこり顔をだして、私に微笑む。
国広は刀を持ったまま、されるがままになっている。
「って!そうじゃない!!ここ見たところ、できたばかりの本丸だよね?!それなのに、何しちゃってんの?!なんでここに主がいるの?
つーか、お前初期刀だよね?!何で主と寝てるんだよ!羨ましい!ってそうじゃなくて!!」
「清光落ち着いて。私が、寝落ちただけなのよ」
「がっつりくっついてたのに?」
「体温暖かくてつい。…って、どうして清光がいるのかしら?初鍛刀は短刀の筈じゃ」
「そんなのもうとっくに顕現したに決まってんじゃん!俺より早く起きて、健気に待ってたよ!!部屋の隅で!!」
「加州さん」
「小夜左文字が!!」
「はい」
「小夜?!待ってるって言ってたのに来てくれたの?!って見ちゃだめ!まだ早い!!」
国広からパッと手を離し、小夜の目を塞ぐ清光。
何だか慌ただしくて、思わず笑ってしまった。
「主が笑った…え?!ちょー可愛い!!えー!!」
清光の手をメリメリッと剥がした、小夜。
「国広、起きよっか」
「あぁ」
そんなやり取りをみて、奇声を上げる清光に大分賑やかになりそうだと思ったのは、ここだけの話だ。
「国広って呼ぶ仲なのかよー!!!!」
本丸中を揺らしたであろうその声のせいか、少しだけズレた掛け時計を、朝の支度を済ませた国広が直す。
小夜はそんな国広が立つ台を支えてくれて、清光は厨で私の脇に立っている。
「清光、驚かせてごめんなさいね」
「俺の方こそ、ごめんね。うるさくして」
「国広とは本当に何でもないから、安心してね」
「本当に?」
「ええ。そうよ。あ、その持ち方危ないわ。猫の手、こうするのよ」
据え置きの最低限の調理器具や家具。
押し入れの中もまだ見れていない。