第5章 ご
「国広、もう大丈夫よ」
そう言うと手が離れてしまって、少し残念に思ったわ。
「チュートリアルの前に、やっぱり聞いて?」
「いいのか?」
「えぇ。私、彼に会う時に不誠実なのは嫌だわって思っていたのだけれど、貴方に対してもそうみたい。縁側に座りましょう、ずっと立っていたんじゃ足が痛くなってしまうわ」
国広の腕を引っ張る、されるがままの姿に、その優しさにそっと気持ちが軽くなった気がした。
私が腰掛けたのを見て、国広も同じようにする。
「…私、前世の記憶があるの。転生って言葉を身をもって知ったわ」
「記憶力がいいんだな」
あっけらかんといいのけた国広に、私のこれはそう言うことなのかしら?と一瞬考えてしまったわ。
「あ、…うん。そうなのかしらね?」
「あぁ」
「えっと、それでね。その、小さい頃に遠征に来ていた鶴丸国永がね、弱っていた私を日当たりの良い場所まで運んでくれたの」
「そうか」
「うん」
「…それだけか?」
「ううん。鶴丸国永は、私を甲斐甲斐しく世話をしたの。雨のも風の日も、どんな日もずっとよ」
「ずっとか」
「うん。世話をしながら、色んな話をしてくれたわ。そうしていたら、三日月や鶯なんかも私を気にかけるようになってくれてね、主に鶴丸国永に対しての愚痴なのよ」
「愚痴?」
「鶴丸国永の、驚きに対する執念についてよ。でも、私には優しくて。アイツが誠実なのは、私にだけって言われたこともあったわ。
そうなのよ、実際。だって私、彼の為に彼がここに連れてきたんだもの」
「彼の為?」
「ええ。ここの審神者だった方の提案って聞いたことがあるわ。
一つ刀が顕現されるたびに一本の桜の木を植えるの。昔はあの木の場所以外にもたくさんの桜があったわ。
驚くわよね、でも全部…焼けたり朽ちたり、酷い侵攻だったの」
侵攻と口に出した瞬間、国広の相槌が止まったわ。
「私はなにも言えないまま、できないままに、仲間が焼ける様を見たわ。怖かった、急なのよ。雷の音が聞こえて、悲鳴も聞こえたきがする。…でも、1番怖かったのは私だけが護られていたこと」
話していたら鮮明に思い出して、ぎゅっと身を縮めた。
「他のモノが朽ちてくのを、次は自分かと思いながら私の番を待つの。
寸前で止まったわ、その恐怖も。ピタッと、霊力ってヤツ?」