第5章 ご
だって、審神者になるんだから。
そのための学校だったんだから。
貴方に会うために、頑張ったんだから。
表向きは一見普通のビルで、中に入るとその重厚さに驚いた。
さすが、時の政府。
政府なんて、よくわからないけれど。
大理石の床、どこまでも続きそうな高い天井にシャンデリア、息をのむ。
受付に声をかければ、腰をかけて待っているようにいわれたわ。
ソファがふかふかだったの。
スポンジケーキみたいな感触で、また驚いたわ。
「XXX番さん…あ、いたいた。君だね」
深く腰掛けていると案内人はすぐに来て、慌てて背筋を伸ばす。
「卒業式終わりにすぐに来てくれたんだって?」
「えぇ、まぁ」
「ありがとうございます。それじゃあ早速案内するので」
言われるがままについていく、驚いたのはロビーを抜けた先の静さと打って変わって、シャンデリアは不似合いな質素な空間だったから。
もちろん、不似合いだからこそ着いていないのかもしれないけれど。
「それではまず、初期刀を」
初めての刀は貴方がよかったわ。
なんて、酷い主ね。
貴方以外ならなんでもよくて、私は適当に手を伸ばした。
私が触れた瞬間に、桜が舞った。
それが驚くほど綺麗で、羨ましいと思った。
フードを被っていたの。
そういえば貴方の人の身の姿の装束にも、フードがついていたわね。
山姥切国広、その刀はそう名乗ったわ。
綺麗なのにわざわざボロボロ、もったいないと思った。
直接は言わないわ、見つめただけで綺麗とか言うなって言っていたから。
綺麗と言われることが嫌なんて、変わっているのね。
「担当さん、彼と話をしたいのだけれど」
「個室が良ろしければ、応接間をお貸しできますが」
「えぇ、お願いいたします」
案内された応接間は小さな個室で、内緒話をするのに丁度いい具合だった。
顕現をさせたものの、私が審神者をやる意味を伝えなければ不誠実だと思って、連れて行く前に話をしたかった。
要はクーリングオフみたいな、だって私が彼を選んだとしても彼だって選ぶ権利があるでしょう?
もっと純粋な審神者がいいと思うかもしれない。
「担当さん、席を外してくださる?」
席についてそう声をかければ、困ったような顔をさせながらも担当さんは、部屋を出てくれた。