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cerisier 【刀剣乱舞】

第3章 さん


 紹介されなくてもわかったわ。
 だって、大慶は見た事なかったもの。

 でも、貴方に似ているわ。
 優しくて、あったかい。

 「俺は、大慶直胤。それは桜?」
 「ええ、素敵でしょ?」
 「うん!とーっても!!」

 清麿と水心子は目を合わせて驚いていたわ。

 「貴方、好きよ。だぁい好き。優しくて、居心地がいいわ。抱っこも上手」
 「えー?」
 「大慶、懐かれちゃったね」
 「先に見つけたのは私だが」
 「正秀にヤキモチ妬かれちゃうから、困るなー」
 「大丈夫よ。私心に決めた相手がいるもの」
 「フラれちゃったね」
 「清麿くーん。どっちかって言うと、フラれたのは正秀じゃなーい?」
 「な!」
 「水心子も嫌いじゃないわ。もちろん、清麿も」
 「よかったね、水心子。僕を知っているのかい?」
 「ええ」

 大慶に抱かれた私をじっと見る、清麿。
 桜を閉じ込めたような、眼。

 「…ふーん」
 「なに?なに??」

 興奮した大慶の声。

 「…僕も、嫌いではない。…かな」
 「そう、良かったわ。貴方には嫌われていたと思っていたもの」
 「そんなこと言ったかな?」
 「分かりやすいわよ、貴方」
 「へぇ?」
 「バチバチ?!」
 「清麿、相手は子供なんだから」

 嗜める水心子。
 大慶はアワアワとしていて、清麿は私を怪しんでいたけど、今までで2番目に楽しかった時間だったわ。

 「あぁ、来た来た。御三方、到着されたんですね」

 私をそっと下ろした大慶。
 清麿は隠すように私の前に立ったわ。

 「あぁ、今来たよ」
 「さんの、お相手をしてくださっていたんですね」

 やけに腰を低くした、嫌な人間。
 さっき私が話さないことを、馬鹿にした人間。

 清麿が私を隠した意味はわからなかったけど。

 「様も、中に入られますか?」

 先ほどまで、厄介払いしていたくせに。
 話をしたくもなくて、首を振ったわ。
 酷く安心したような顔をしたその人間は、3人を連れて行ったわ。

 3人は私にまたねと言って、行ってしまった。

 …空に行ってしまった両親よりも、貴方達3人に今会えないことの方が寂しいなんて、どうかしているわ。

 水心子や大慶が褒めてくれたスケッチブックの桜を抱えて、私は扉が開くのを待った。

 何時間も、そんな気がしたわ。
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