第3章 さん
「貴方デリカシーがないわ」
「え、あ、…すまない」
「いいの。魔法が使えないのは不便だけど、でも、貴方以外ともお話ができる口や、触れられる体があるもの。私が使えた魔法より、よっぽどいいはずよ」
「君は、凄いな」
「さっきからそればっかり。"凄い"と、"すまない"。もっと他のを聞きたいわ。ごめんなさいね、お話しできることが嬉しくて、私のことばかり、つい話し過ぎちゃった。貴方のことも聞きたいわ、私これでも聞き上手なの」
「そうなんだ」
「だから、聞かせて」
「そうだな、どんな話がいい?」
「うーん。清麿と、大慶」
貴方はまた目を見開かせる。
少し困ったような表情をしたから、話題を間違えたのかなと思ったわ。
でも、記憶力はいいのよ。
貴方、その2人と一緒に私を見たいって言ってたじゃない?
何かあったのかしら、私が知らない間に。
「無理しなくていいわ。私、清麿は知ってる。貴方を想っていた。私に対してはそうではなかったけれど。でも、貴方を想えばこそって分かる。だから怒ってないの。大慶は分からないわ。会ったことないの。でも、貴方の大切な人が素敵じゃないわけないの。だから、聞きたいと思ったのだけど、デリカシーがなかったら、ごめんなさい」
「いや、いいんだ。なんていうか、君と初めて会った気がしなくて」
「初めてじゃないもの」
「…」
「忘れるなんて酷いわ。でもいいの、私も忘れていたから」
「……」
「そう。困った顔じゃなかったのね、何か、悲しい事を思い出したのね?」
「僕が、大切にしたかったモノに、君は似てる。きっと会った事あるんだろうね、君がそう言うなら」
ほら、やっぱり忘れているんだわ。
「水心子が大切にしたかったモノ?」
「あぁ」
「それは何?聞いてもいいの?」
「約束」
「約束?」
「それって、」
私が言いかけた時、貴方の迎えが来たわ。
自動ドアの開閉音。
いいわね、今も昔も貴方には迎えに来てくれる人がいる。
「清麿、大慶」
あぁ、お久しぶりね。あと、はじめまして。
「時間、間に合ったんだな」
「うん」
「お世話になったから、間に合って良かったよぉ。
正秀、その子は??」
「2人が来る間話し相手になってもらっていたんだ」
水心子がそういうと、大慶が私を軽々しく持ち上げた。