第3章 さん
目が覚めた時には車の中で、外はオレンジに染まっていた。
「お目覚めですか?」
コクンとうなづく。
「今後の話をしますね」
ルームミラー越しに目が合った人は、私が知らない人間だった。
「様は時の政府の管轄の児童施設に住んでいただくことになります。
そこで審神者の教育を…」
難しくて、聞き流したわ。
だって、私拒否権ないもの。
こんな小さな体で、何ができると言うの?
施設に入ったら、あの3人に会うことはもう出来ないのでしょうね。
今回だって、たまたま会えただけだもの。
貴方にも会えないかもしれないわ。
「以上となります」
そう言われて、慌ててうなづいたわ。
聞いてないことがバレたら怒られそうだったんだもの。
怒られるのは嫌。
好きな子なんていないでしょう?
怒られるってすごく面倒。声は大きくて怖いし、態度は横暴になるし、感情を押し付けないでほしいって思うの。
その後送り届けられた家はシーンとしていたわ。
荷物をまとめて置くようにって、こんな体で何を纏めろというのよ。
手伝いもしないで、明日迎えに来るですって。
私じゃなかったら、どうするのよ。
なんて文句を言ってあげる気も失せたわ。
私じゃなかったら言わないと思うもの。
もっとか弱くて、もっと理屈的じゃなければね。
持っていきたいものなんてないわ。
そういいつつ、鞄のポケットには私を生み出してくれた人達の写真を忍ばせる。
前に何かで聞いたわ、忘れられてしまったらそれが本当の最期ってね。
じゃあ、私が覚えておくわ。
産まれた時から私を大事にしてくれた、両親のことを。
多分、大事にしてくれていたと思いたいわ。
比較対象がないもの、比べようがないじゃない。
その日はいつか両親に買ってもらった、白い鳥の人形を抱いて眠ったの。
シマエナガって、貴方に似てる鳥。
そんなこと言ったら、貴方怒りそうね。
抱きしめて、布団を被ったら急に悲しくなって、涙が溢れたわ。
何に泣いているか分からなかったの、いつか分かるかしら?
だって私、まだ人になって日が浅いんだもの。
貴方に余計会いたくなったってことだけ、分かった気がするわ。
会いたいわ。
話したいわ。
触れたいわ。
ねぇ、薄情ね。今、貴方を想うのは。