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先生と僕

第5章 ■青年期の帰還


「先生、クエスト完了し帰還しました」
「おかえりナタ」
新進気鋭のハンターを出迎えた熟練のハンターはいつもの場所に腰かけたまま彼がほぼ無傷であることを確認して目を細め頷いた。
「詳細の報告は不要だ」
一見突き放したような言葉だがハンターをよく理解しているナタは
「はい、もう一人前のハンターって認めてもらいましたもんね」
と誇らしそうに受け入れて、その代わりにとハンターの後ろに立った。
「ナタ?」
「失礼します」
言葉の割には有無を言わせずハンターの脇に手を入れて持ち上げる。幸い武器を持たず防具もほとんど外していたため容易に彼女を自分の膝に乗せることができた。
そのまま後ろから抱きしめて首筋に顔を埋める。
ハンターの口から戦闘中でも聞かないような小さな悲鳴が漏れたがナタは無視した。
「ナ、ナタ!?」
「先生、いい匂いがする……」
「アズズで湯浴みさせてもらったから。 ナタ、どうした?」
「エネルギー補給です」
お腹が空いているならば何か食べたほうがいいだろうとハンターは考えるのだが腹の辺りでガッシリとナタは腕を絡ませており、もはや振りほどくのは容易ではない。周囲を見ても通りすがる人たちは素知らぬフリをするから微妙な表情をするばかりで声をかけてはくれない。
「ナタ……せめて移動を」
「二人きりになったらガマンできないけどいいんですか?」
「……良くない」
まだ太陽は沈んでいないし、ナタのクエスト後の処理が終わっていない。だからこその一時的な補給なのだろうが。
「ナタ、その、手が……不埒な動きをしているのだが」
「不可抗力です」
何が不可抗力なのだろうか。問い詰める前に神の采配かアルマが来てナタを叱りつけてくれた。師弟とは別の、姉弟のような関係であるアルマには逆らえないようだ。しぶしぶハンターを解放しながらも耳元で最初の頃よりずっと低くなった声で
「また後で……」
と囁いたナタはすっかり一人前の男の顔になっていてハンターはその成長ぶりに気絶しそうになるのだった。
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