第22章 ■思春期の面談
「あなたには謝らなければならないと思っていた」
鳥の隊のハンターの言葉にタシンは瞠目した。
彼女一人の尽力だけではないことは確かだが、彼女がいなければ今この世界は存在しなかった。親友の忘れ形見が立派な大人として新しい未来を見据えて進んでいる最大の功績者は彼女だった。
いくら感謝を伝えても足りないが謝罪を受ける理由がない。
「ナタは……シルドの最後の子どもだ」
彼女の言いたいことを理解する。ナタはハンターになることに決めた。これからも事あるごとにシルドに帰ってくるだろうし、何かあれば飛んできてくれるだろう。しかし同時にシルドを居住地として結婚し、子どもを増やすことはない。
ナタでシルド、守人の血統は絶える。その意味をナタがどれほど理解しているかはタシンにもわからないが、それを説くつもりもない。
「アズズやクナファとは違う。 シルドは存在そのものを選ぶ時が来た」
選べると伝えに来てくれたのはナタだ。あの時の誇らしげな輝いた顔をタシンは忘れないだろう。
これからナタはこの地の新しい生き方を示し、外の世界とこの地を結ぶ子どもになるだろう。シルドだけの子どもではないのだ。タシンは決して父親を気取るつもりはなかったが、胸の奥から湧き上がる誇らしさは消せない。
「私はナタが自分で見て、自分で学び、そして選び取った道を尊重したい」
あなたもそうではないか、と尋ねればハンターは神妙に首肯した。タシンは彼女が同じ気持ちであることに安堵すると共にその迷いなさを眩しく思った。
この強く美しくどこまでも真っ直ぐなハンターと出会ったことがナタにとっての運命だったのだ。
タシンは親友の息子の淡い初恋を知っている。むしろ知らないのは彼女だけかもしれない。
「またあなたが挨拶に来てくれるのを待っている」
不思議そうな顔をするハンターの向こうにまた溢れんばかりの希望に満ちた、今よりも更に成長したナタの姿をタシンは夢見るのだった。