第21章 ■思春期の後悔
テントの隅で頭を抱えるナタを見つけてアルマはどうしたの?と優しく声をかけた。ナタがこんな風に落ち込んでいるのは久しぶりだ。ハンターと狩りには出ていないはずだが、何かしら注意をされたのだろうか。だとしてもハンターは優しく理論的に説き、最後にはナタを励ますはずだ。
「僕……間違ったことをした」
それもそれで珍しい。ナタは周囲が心配するほど真面目で慎重で、失敗することはあっても間違いを犯すことは少ない。
「間違ったなら訂正すればいいんじゃない?」
情報が少なすぎてアドバイスの内容も限られるが基本的なアルマの方針を伝えるとそれはだめだとナタは首を振った。
「何でって聞かれたらどうしよう……」
言えないの?と聞くと眉を下げ目を閉じて何度も頷いた。
つまり何らかの意図があって間違いを犯したが叱責が恐いのではなくその意図を知られたくないようだ。
「相手は大人?」
「うん」
「それは命に関わる間違い?」
予想通り今度は首を横に振る。恐らく、ほとんどの人にとって重大な問題ではないのだろう。そうならどんなに不利益を被るとしてもナタはアルマたちに報告する。
「なら放っておいても大丈夫じゃないかな」
「そう……かな?」
「間違いに気づいても自分で対処できると思う」
「……確かにそう、かも……でも……」
ナタの歯切れは良くない。やはり彼なりに複雑な事情があるようだ。そこで思いつくのが我らが鳥の隊のハンターの存在である。自覚しているのかは微妙なラインであるが、ナタは確実に彼女に思慕の念を抱いている。師匠としての尊敬ではなく一人の女性としての単なる憧れ以上の好意を。
お茶をいれてくると伝えてハンターのテントに行くとこちらも頭を抱えて小さくなっていた。
『……どうしたんですか?』
色々な予感を押し込めて尋ねる。
『師匠なのに……試すような真似をしてしまった……』
どうやらどっちもどっちらしい。
『まずはナタにお茶をいれてきますね』
『うん……あの、私が読み書きの練習しているのはナタには言わないで』
『わかりましたけど、後で詳細を聞かせてくださいね』
はい、としおらしく返事したハンターのお茶もいれにアルマは急いだ。