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先生と僕

第20章 ■思春期の翻訳


先生が難しい顔で白っぽくて大きめの布を睨みつけている。
何かの素材だろうか。
「どうしたんですか?」
必要なら預かろうかと思って尋ねると先生は僕の顔を見て表情をゆるめて僕の名前を呼んだ。
「クナファの青年に手紙をもらったのだが読めない」
どうやら布には染料で文字が書いてある。ここでは紙が貴重なので大事なことは布や石板に記すことはある。でも先生に渡すなんて。
先生はもちろん僕たちの言葉、アルマの言う古代語を喋れる。禁足地調査隊に参加する条件のひとつだからだ。
でもあまり得意ではない。交渉とか難しい話はアルマに任せるし、簡単な言葉は読んだり書いたりできるけどこの手紙はそうではないみたいだ。
「よかったら僕が代わりに読みましょうか?」
「頼むよ」
先生はあっさりと僕に布を渡してくれた。最初の数行を見てやっぱりと嫌な予感が当たったことを確かめる。
これはラブレターだ。先生に助けられたこと、先生が強く美しいこと、手紙の主と夫婦になって共にクナファを守ろうなどと長々と書いてあった。
「先生、これを渡した男の人は気の弱そうな感じでしたか?」
「うーん、まあ、そうかも」
だろうなと僕は納得する。面と向かって告白しないなんて男らしくない。戦えることと男らしいことは別だ。
「渡されたときに何か言われましたか?」
「気持ちだから読んでほしいとだけ」
返事をくれと言われたなら警戒しないといけないけど、それだけなら自分で聞く勇気もなさそうだ。
何て伝えたらいいかな。考えながら不思議そうな先生に僕は布をたたんで返した。
「先生に助けてもらってありがとうと、先生のことをほめています。 クナファにずっと住んでほしいそうです」
「要請があれば救援に行くが住むつもりはないな」
「そうですね、もし今度会ったらそう伝えるのがいいと思います」
先生は受け取ってありがとうナタと頭を撫でてくれた。
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