第19章 ■青年期の宴会
まだハンター見習いだった頃の僕の定位置は先生の隣だった。宴の終わりには眠気を我慢できなくて、寄りかかったところを先生に抱っこされてテントに帰るのをみんなに見守られていたのは今でも火が出るほど恥ずかしいけれど、先生の温かさや柔らかさと力強さ、先生の独特な匂いに包まれるのは安心と多幸感があった。
先生に対する感情が尊敬だけでなくなった頃は先生の近くにいすぎると気持ちがバレてしまいそうで、自分がコントロールができないのが嫌で、でも他の誰かが先生の隣を占領するのも嫌で先生の後ろの辺りで興味のないふりをしながら先生の様子を探っていた。先生は時々僕の様子を見るけれど話しかけることはなく、そして気が付いたらハンモックで寝ていた。まだまだ子どもだって言われているようで悔しかった。
そして今、僕の位置は先生の……下、になるのだろうか。
「ナタ……隣でも良くないか?」
「いいじゃないですか、久しぶりなんだし。 誰も気にしてませんよ」
「気にしてほしい……」
僕の膝の上で先生は縮こまっている。子どもの頃はあんなに大きく見えたのに、今は装備を外せば僕の腕の中にすっぽり収まってしまう。周囲の視線は生温かい。そもそも僕の恋心もほぼ最初から知れ渡っていて、面白がるの半分応援するの半分だったらしい。邪魔されなかっただけありがたく思うことにしている。アルマとジェマが根回ししてくれてたのが大きいんだろうけど。頼りになる姉貴分だ。
ほぼ唯一気づいていなかった先生も、今は恥ずかしがりつつも逃げずに僕の膝でお酒を飲んでいる。
「確かに久しぶりだけど今でなくてもいいと思う」
子どもの頃は普通に頭を撫でて抱きしめてくれたのに、随分意識してくれるようになって嬉しい。まあきちんと僕が男だってことを示した結果なんだけど。
「じゃあ少し早いけど、テントに戻りますか?」
赤くなった耳元に囁く。きっと馬鹿とか言われるだろうと思ったのに先生は酒精に溶けた瞳で僕を見上げてきた。
「ナタ……いつもより酔ったみたいだ。 テントに連れて行って」
「……拝命しました」
平静を装って先生を抱き上げる。野次は無視してなるべく焦っているのを隠して僕はテントに向かった。