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先生と僕

第18章 ■少年期の悩み


先生が他の隊のハンターと次の探索場所について話している。
先生がエリックとヴェルナーとそれぞれの専門分野について話している。
先生がジェマと装備の調整について話している。
先生がアルマとクエストの詳細について話している。
どれも仕事の大切なことで邪魔をしようなんて思わない。だけど話の終わりの方で相手が何かを言うと先生はそれまでの厳しい表情をゆるめて、とても嬉しそうに口の端を上げてこたえるから僕は気になってしかたがない。
何の話をしているんだろう。先生の好きなこと、先生の喜ぶことを僕は知らない。あんな顔を僕には向けてくれない。
胸の奥がもやもやしてアルシュベルドを憎んでいた時のような嫌な気持ちになる。
何でだろう。アルマやジェマや他のみんなも僕を助けてくれて嫌いなはずがないのに。
そう、僕は変わったんだ。これからも変わっていくんだ。
アルマにお茶に誘われてちょうど二人きりなので思いきって聞いてみる。
「あの、アルマは、先生と……その、どんな話をしているの?」
アルマは少し首を傾けて、現在のクエストの内容や今後について、調査隊全体の様子について、お互いの体調や気になることがないかなど。
特に先生が喜ぶような話ではない。
「何かあった?」
「ううん、ちょっと聞いてみただけ」
ジェマに聞いても、エリックに聞いても特別な話題はなかった。
まあそうだよね、と思いながらヴェルナーのところに行くか迷う。ヴェルナーはペンダントに興味があるから。でも力ずくで奪ったりはしない。オリヴィアと先生が怖いから。アルマとジェマも怒ってくれるし。「ヴェルナーも丸くなったよ。他の隊のことも覚えるようになったし」
とエリックも言っていたので作業が終わったところを話しかけると難しい顔で腕を組み黙ってしまった。
こういう話は嫌だったかな。やっぱりいいと引き下がろうとしたところでニヤリと笑って指をさされた。
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