
第17章 ■思春期の装飾

塔の隊と次のクエストについて話していたナタはジェマの新しい特別な装備を見てほしいという申し出に同意する前に引っ張られてテントまで来ていた。もう力でも勝てるのだが散々世話になっているのでどうにも逆らいにくい。
「新しい特別な装備って?」
「見ればわかる。ただし!」
ぐぐいっと顔が迫って来てナタは仰け反った。恥ずかしさもあるが単純に怖い。
「少しでも心にもないことを言ったら他の奴にあげちゃうから!」
「ええ……」
自分の装備を誰かに使い回すなんてできるのだろうか。疑問を抱きながら入るとすぐに『新しい特別な装備』は見つかった。
「……せんせえ……?」
いつもと違う服装と髪型で薄化粧までしている。あまりの姿に見惚れると共に、妙齢の女性が着飾る理由として『結婚』がナタの言葉に思い浮かんだ。血の気が引くがジェマの言葉を思い出して失神手前で立ち直る。
「それ、僕以外の誰か見ましたか!?」
「え? ジェマ」
「ジェマはノーカンです。アルマも」
あの二人はナタにとって身内も同然だった。ハンターもそうなのだが、それ以外の感情が上乗せされている。いつもなら腕を取るなりして問い詰めるのだが今の彼女にはとても触れられない。壊したくない。逃がしたくない。
「ジェマとナタだけ」
良かったと胸を撫で下ろし、不思議そうな顔をしているハンターに「僕以外の人に見せないで」と伝えると整えられた眉が下がった。
「ジェマは褒めてくれたが、ナタが不快ならそうする」
「逆です! 綺麗過ぎるから誰にも見せたくないんです」
わかっていない様子のハンターにああもうとナタは苛立ちを露にする。ハンターはハンターとしては自他共に一流だが人間としては意外と自己評価が低い。
「先生は綺麗です。 いつも一番美しいと思ってる」
「いつも?」
「いつもです」
本当は恥ずかしくて伝えたくなかったのだがジェマの言葉が大きなプレッシャーとなってナタの心の内を吐き出させている。
「ハンターの先生も皆に自慢したいくらい美しいです。でも今の先生は……綺麗過ぎて誰かに取られそうで嫌だ……!」
「自分はナタ以外に弟子を取るつもりはない」
「そうですけど、そうじゃなくて」
やはり通じていない。もどかしいと思いながらハンターの顔を見るといつもよりも赤く染まっていて。いつもの美しさに綺麗さと可愛らしさが上乗せされてナタはタル爆弾のようになるのだった。
