第16章 ■少年期の編纂者
そしてナタは師匠として、まだ無自覚のようだがそれ以上にを慕うようになった。
年頃の少年が自分のことを命がけで守り、戦い、理解しようと努めてくれる年上の女性に好意を抱くのは自然なことだろう。幸いにも周囲は内密で酒の肴にしても直接揶揄したり諭すようなことをせずナタの成長を見守り、当のはすっかりナタに愛着を持っているものの恋愛感情はないようだった。相手が未成年なのだから当然と言えば当然なのだが。
ただナタも性急に事を進めず、に相応しい大人になると将来の目標として前向きに捉えていたのでアルマも(ジェマも)応援することにした。
それに「ハンターしかできない」「弟子を取れるとは思えない」と言っていたがナタのために奔走する姿もまた良い方向に向かうとアルマには感じられた。
そして今小型モンスターを狩り、採取をしてきた二人はアルマのいれたお茶を飲んで今日の統括をしている。
「立ち回りは悪くなかった。 まだ武器に振り回されている面はあるが体ができあがれば自然と身につくだろう」
「もっとトレーニングが必要ですか?」
「いや、過度な鍛錬は体の成長を妨げる。 焦らず経験を積んでいけばいい」
「……はい」
少し不服そうにカップに口をつける。ナタがこんな風に素直に感情を示すようになったことが嬉しい。もその頭を撫でて慰める。
「気持ちはわかるつもりだ。 だが自分を信じてほしい」
「もちろん、信じます!」
良かったとは嬉しそうにナタの頭を撫で続ける。恐らくその行為もナタには不本意だろうが同時にスキンシップに喜ぶ感情もあるはずだ。思春期は複雑怪奇だ。
「ナタによりよい武器を探すためにも今度は油涌き谷を探索してみよう」
「はい!」
が手探りなのも間違いない。常に最善の道を進んでいるわけではないことも。だからこそ二人は一歩ずつ確実に前に進んでいく事だろう。
アルマはその手伝いがしたいと今は強く思っている。そしてできることなら二人がハンターという立場を超えて結ばれることを。
「今日はゆっくり休んでくださいね」
アルマの助言に二人は素直に頷きお茶のお代わりを申し出た。