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先生と僕

第16章 ■少年期の編纂者


を鳥の隊に勧誘したのは正解だったと穏やかにお茶を飲む二人を見ながらアルマは自然に笑みを浮かべた。
まずナタを発見したのが自分だったのが幸いだった。古代語しか話せないナタとたどたどしいながらも意思疎通を行えたのはその時はアルマとファビウスだけで、特に若い女性編纂者であるアルマは歴戦のハンターであるファビウスよりもナタの警戒心を解くのに適していた。元々救助を求めていただけあって、ナタとの情報交換は比較的スムーズに進んだ。
禁足地調査隊を編成し、ファビウスからナタを同行させ謎のモンスター”白い孤影”と守人の里の探索を行う先遣隊を任命された時にハンターとして思い至ったのが彼女だった。
はそれなりに有名なハンターだ。ソロで生き抜ける程度には戦力も知力もある実力者で、パーティを組まないものの決してコミュニケーションを取らないこともない。誰かの狩りを横取りするとか救援を無視するような悪行も聞いたことがない。共闘したハンターは「戦いやすかった」と言うほどだ。ただひとところに長く留まることはなく、各地を転々とする、理想的なハンターとも言えた。
ファビウス師に進言する際に子どもが帯同することや古代語を習得する必要性について不安視されたが、話を持ち掛けてみるとはあっさりと「努力する」と応じた。そしてその言葉通り最初のアルマと同じくらいたどたどしいながらも古代語を話せるようになり、ぎこちないながらもナタに自ら話しかけハンターとして狩りをするだけでなくその心身を護った。
「あなたはどうしてハンターをやっているんですか?」
まだナタが彼女を先生と呼び慕う前に尋ねたことがある。オトモと装備の確認をしていたはアルマを見上げて困ったようにはにかんだ。
「私は他の生き方を知らない」
彼女がハンターを産み育てる里の出身だと聞いたことはある。しかし彼女も成人した大人だ。他の道を選ぶこともできたはずだ。
「それは正論だと思う。 ただ私はハンターに向いていた……というか他のことに向いているとは思えなかった」
それもまた正論だった。彼女は生粋のハンターだった。だからこそナタに『ハンター』を見せるのに最も適していると言えた。そしてアルマの思惑通りナタは『ハンター』を理解し、『ハンター』と協力して禁足地の謎を解き明かした。世界を救ったといっても過言ではない。
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