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先生と僕

第15章 ■少年期の手遊び


先生が僕をじっと見ている。いつものモンスターを観察する目だ。アルマもジェマも研究者気質だと言うし本当にそうだと思うけれど、先生も同じ仲間だと思う。
「どうかしましたか?」
基本的に僕から聞かないと先生は話さない。先生がそういう人だと僕はもう知っているので不安とかはなくてしょうがないなという感じだ。多分ここで先生よりも強い人はいないのに、僕がいないとダメだな、なんて思い上がってしまう。
「ナタの髪が気になった」
調査隊の人たちも色々な髪形や髪色の人がいて、僕のが特別珍しいとは思わないけれど先生に意識されると何だか嬉しい。
「触ってみますか」
言ってから気づいたけどよく頭を撫でられている。子ども扱いは少し嫌だけれど不器用な先生の好きって気持ちは伝わるから黙って受け入れている。
けれども先生はうんと応えて両手を僕の両耳の後ろに手を回した。
縛っている毛の束をアイルーのしっぽのようにちょいちょいと弄る。
「ナタの毛は柔らかい」
「先生は僕をアイルーだと思っていませんか?」
先生はそんなことはないとはにかむけれどそうとしか思えない。
「僕は男だよ」
見栄を張っても、全然単純な力でも先生に勝てないんだけど、いつかは勝てるようになりたい。男として意識してほしい。
「大きくなったら髪を切る?」
「……先生はどっちが好きですか?」
ちょっとイジワルな質問かなと思ったけど先生はものすごい顔で考え込んで苦しそうに答えた。
「ナタの自由にしてほしいけど、触るとすごく安心するからある程度残してくれたら嬉しい」
僕の意思を尊重しつつ先生の個人的な意見を付け足す。これが大人のテクニック……!
まだ見習いの僕はクラクラしながらもわかりましたと返事をしてご機嫌になった先生にしばらく髪の毛を預けた。
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