第14章 ■少年期の奔走
「大丈夫!?」
『頭が痛い』
久しぶりに聞く西の言葉を飲み込んで、瓶を差し出す。
『栄養の薬を飲めますか? ハチミツの入ったの』
『飲む』
今度は手に置くと受け取ってもらえたので安堵する。ハンターはいつものようにそれをあおるようにして飲み込み空瓶を返す。
『汗が気持ち悪い……』
『着替えますか? オトモから預かってます』
オトモ、と呟いたハンターはむくりと起き上がった。
『手伝って』
「え゛!?」
何をかなど聞くべくもない。するすると脱ぎ出すので慌てて背を向け、タオルを後ろ手で渡す。
『お湯! もらって来ます!』
『まだ汗かくからいいよ。着替えをもらえる?』
『はいっ』
着替えの音を聞きながらナタは深呼吸をし、受け取った衣服をまとめる。
「……ナタ?」
「はい?」
後ろ頭をふわりと撫でられて、首筋にあたる指先が熱かった、わっと驚く声を聞いた。
「あっ、すまない! 途中からオトモと混同して……うっ!」
「先生、わかったから横になって!」
頭を押さえるハンターをなだめてハンモックに寝かせる。ハンターは額に冷えた布を乗せながらうろたえていた。
「はしたない真似をした……」
「熱が出てるんですから大丈夫ですよ」
とてもドキドキしたことは隠して微笑んで見せる。確かに様子がおかしかったが、熱と寝ぼけていたためにナタとオトモを見間違えていたというなら納得だ。多少は異性として扱われていたのだと思うと安心もする。
「熱を出したのは……数年ぶりだ」
やっぱりそうなんだ、という言葉は飲み込む。それならばいかなハンターと言えども心細いだろう。それを揶揄するつもりはナタにはない。むしろ甘やかしたいという欲求が沸いてくる。
「服を洗濯に出して、薬ができてないか聞いてきますね」
「うん……ナタ」
今度は間違いなくナタに伸ばされた手を握る。決して華奢でも柔らかでもない、けれども強く美しい、ナタの今一番好きな手だ。
「はい」
「できれば……はやく戻ってきてほしい」
「っ……拝命しました!」
最優先のクエストを受けてナタは静かにテントから飛び出した。