第11章 ■思春期の決意
先生は対人戦も強い。身体を動かすための鍛練として嗜んでいるのと、「自分に勝ったら言うことを聞く」ということにしているらしい。武器なしの戦いで男の人に勝てるなんてビックリするけど、ハンターは案外対人戦は向いてないらしいし、先生が特殊な暗殺術を使うとかなんとか尾ひれがついた結果、逆にチャレンジする人がいなくなったとか。
「今のところ勝ったのは師匠とファビウス卿だけ」
「ファビウス卿も!?」
やっぱりあの人は凄い。
「え、で、先生はファビウス卿に何を命令されたんですか……?」
あの人が善い人だって知ってるけど、僕だって信頼してるけど、でも万が一ということもありえなくはない。護竜みたいなことだってあるんだし。
すると先生は不思議そうな顔で地面をトントンと蹴った。
「何故自分がここにいると思う?」
「あ……!」
ソロを好む先生が三人一組かつ子どもを連れて未開の地の先遣隊として戦うキッカケ。僕はそれどころじゃなくて気にしていなかったけど、ファビウス卿に負けたからと言われるとすごく納得できる。
「嫌だったわけじゃない。勘違いされるけど子どもは好きだ」
「知ってます」
僕のことも最初から気にかけてくれていた。言葉を覚えるのが得意ではないのと性格が不器用なだけで、とても優しい人だって知っている。
「今は卿に感謝している」
「はい、僕も!」
先生に先に勝ってしまったのは悔しいけれど、それで僕が先生に出会えたのなら感謝しなくちゃならない。
「あ、でもまたファビウス卿と戦ったら……」
「次は負けない」
本気の声、本気の眼差しで先生が言う。僕も先生を信じる。今度は負けないって。そして、
「僕が先に先生に勝ってその約束事自体をナシにさせます!」
「……ん?」
不思議そうな先生をよそに僕は決意を新たにするのだった。