第9章 ■青年期の共寝
鳥のさえずりに目を覚ましたハンターが起き上がろうとするとガッチリ抱き込まれていることに気づいた。脚は絡めとられているし、腕は広くなった背中から抜け出せず、仕方がなく頭を逞しく育った胸板にすりよせる。
人肌の温かさと男の匂いと心臓の音を感じながらしばらく目を閉じていたがちっとも起きる気配がないので脚を擦りあげる。
「ぅ……んん……」
頭の上から低い微睡んだ声が聞こえてまあ随分気持ちよく眠っているものだとハンターは自分を棚にあげて感心した。
「なた……ナタ」
「ン……せんせぃ」
まだどろりとした甘さの残る声で呼ばれてハンターは身震いする。体温が僅かに上がり心音が速くなる。
「ナタ、朝だ」
「きょう、は休みじゃ…なかったんですか」
舌足らずでハンターの頭に自分の頭を擦り付けるように甘えてくる辺りはまだまだ子どもだ。
「休みでも、じっとしているのはもったいない」
「えぇ……もっとすれば良かった」
「バカ」
十分だろうと笑って緩んだ腕から抜け出す。素材を整理したり装備を整えたり鍛錬をしたり食糧を調達したり、することはいくらでもある。
ふふ、とナタも嬉しそうな声をこぼした。
「先生がそういう悪態つくのって対等になった気がします」
「ナタはいつまでも自分を先生扱いする」
膨れてみせるとだってと甘えた声で手を伸ばしてくる。不思議なものだ。子どもの頃は必死に虚勢をはって大人びて見せていたのに。
「いつも恋人でいていいの?」
「……やっぱり今のままでいい」
頬を撫でられて赤面するハンターにナタは満足そうに微笑んだ。