第2章 あの人
黙った俺を見て“luna”さんは『聞きたいことがあるなら聞いてもいいんだぞ?』と言ってくれた。
内心見透かされたようだったけどまぁいい。
「じゃあ、あの、動画見てる時も思ってたんですがその口調って…?」
『あぁ、これ?なんだ、てっきりダンスのことかと思ったんだが。単に性別をわかりにくくするためだ。プライベートの時はもっと普通の話し方だぞ』
そう言って笑う“luna”さんは確かに、間近で接しても性別がわからない。
中性、と言われればそれで終わりだけど。
朔間先輩みたいに、その話し方がクセになってるのかも。
「そうなんですね。一瞬ダンスのことにしようかとも思ったんですけど、ここで聞いて教えてもらうのは難しいかと思って質問を変えました」
『ふむ、そうだな。ここでダンスは出来まい。…ゆうたはアイドルだったな。アーティストの振り付けはやったことがあるが、アイドルの振り付けはやったことがない』
「どういう意味ですか?」
『ここで話がわからん君じゃなかろう。事務所はコズプロだったな、今度“2wink”の振り付けをしたいと連絡しておこう』
「っ!!ほんとですか!?」
『ここで嘘をついて私になんの徳がある。いつになるかはわからんが、必ず私が振り付けを作ってあげよう』
その場で叫ばないようにガッツポーズで喜びを表す。
それを見て“luna”さんはスマホを取り出し操作をする。
本当に夢じゃないのか、これは!
憧れのダンサーさんに振り付けを作ってもらえるなんてこんな光栄なことって…!
今すぐアニキたちに報告したいけど、アニキ別に喜ばなさそ〜。
“プロデューサー”さんも知らなさそうだし…
そこまで考えたところでスマホがなった。
断りを入れてから確認すると“プロデューサー”さんからだった。
内容は“luna”さんからダンスの振り付けをしたいと申し出があったが引き受けても良いか、というものだった。
『ゆうたのところの“プロデューサー”は仕事が早いな。私の“プロデューサー”と引けを取らない報連相だ』
「えっ、これって今の話ですよね…?もしかしてさっきスマホ操作してたのって…!」