第4章 当日
『あぁそうだ、それを伝えに来たんだった。素晴らしいステージだったぞ。よく私の振り付けをあの短期間でここまで仕上げたな。やはり、私の目に狂いはなかった』
「よかった〜、これで酷評だったらさすがに心折れてたかも」
『まぁ、細かい部分の話をすればまだまだヒヨっ子だがな』
「ひぃっ、急に真顔でそんなこと言わないでくださいよ〜!」
『これに慢心せず、これからも精進しなさい。…ところで、ゆうたは何故黙りこくっている?』
「…あ、すみません、少し考え事をしていて」
『以前私に対しては謝るなと言ったが、今のは私の聞き方が悪かったか…。して、その悩みとは?私でよければ話を聞いてやろう』
「いい機会じゃん、ゆうたくん。行ってきなよ」
「誰のせいで悩んでると思ってるの…俺なりに結論を出したつもりでいたけど、確かめてみようかな」
『話は着いたようだな。行くぞ』
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再び“luna”さんに連れられて着いた場所は初めて話した時と同じカフェだった。
あの会場、初めて会ったテレビ局の近くだ…
それに、やっぱりエスコートされてる…
もう既に懐かしく感じるのはなんでだろう?
店員さんに案内され、席に着くと“luna”さんはおもむろにチョーカーを外した。
不思議に思いながら見ていると、視線に気付いたのか“luna”さんがふっと笑う。
『チョーカーを外す理由が気になるか?』
「はい。見つめちゃってすみません」
『その位のことで謝らんで良い。チョーカーを外したのは変声期を取るためだ。いつもの動画の声と同じになるようにチョーカーに着けた。だがゆうたには既に地声を聞かれているから外したところで問題もないし、さすがに変声期の声は目立つ』
「あぁだから動画と同じ声だったんですね。どうやってるのか気になってたのですっきりしました」
『そうか、それは良かった。…さて。改めて聞くがゆうたの悩みとは何だ?』
俺は“luna”さんにアニキや“プロデューサー”さんに言われたことや
それを踏まえて自分なりに出した結論を話した。
どこまで話していいのか分からず、上手く伝えられたかも分からない。
それでも“luna”さんは俺の話を最後まで黙って聞いてくれた。