第3章 レッスン
「これはもう失敗できないね、ゆうたくん♪」
「アニキこそ、俺の足を引っ張らないでよね」
〚では、今日はもう帰りなさい。この後も続けようと考えるんじゃないよ〛
そう言って"luna"さんは通話を切り、
心の内を見透かされた俺たちは顔を見合わせて笑った。
おとなしく帰ろうとレッスン室の掃除を始める。
"プロデューサー"さんもすぐ終わる仕事を片付けると言って残った。
「ねぇねぇゆうたくん。俺と"luna"さんに対する態度の違いって何?」
「何その気持ち悪い質問…ていうか憧れの人にこんなお粗末な態度とれるわけないでしょ」
「ちょっと!お兄ちゃんにも優しくしてよ!?」
「私も思ったなぁ。ゆうたくん、"luna"さんと話してるときは丸くなってる気がする」
「ほら!"プロデューサー"もこう言ってるからやっぱり態度違うよ!」
「そう言われても無自覚ですし、特にこれといった理由はないと思いますけど」
「…ゆうたくん。俺の勘違いだったらごめんね、ゆうたくんの"luna"さんに対する気持ちって本当に憧れなの?」
質問の意図が読めなかった。
それなのに聞き返しても「なんでもない」とはぐらかされるだけで、
アニキも"プロデューサー"さんも何も教えてくれない。
おふざけならそれでいい。
でもアニキがふざけてるようにも見えなかった。
日を改めても何事もなかったかのようにレッスンは進むし
問いただしても「なんのこと?」としらを切られるだけ。
悶々としたまま、新曲イベントの当日になってしまった_____。