第3章 レッスン
指摘を受けた部分を意識してもう一度踊ったら今度は『指摘した部分に気を取られすぎだ』と呆れられた。
その指摘を一つ一つ直している時間はないので、
動きがズレがちな振り付けの確認に移った。
〚“2wink”は双子であり、シンクロしたパフォーマンスが売りと聞いた〛
「息のあったシンクロダンスは俺たちの“ユニット”の結成当時から変わらない特徴です」
〚そうか。ではBメロの部分もしっかりと揃えないとな。まず合わせるためには、だが…お互いのダンスのクオリティをもっとあげなさい。実力に差があるままじゃ揃うものも揃わない〛
「あはは…やっぱりここ出来てないか〜。結構ゆうたくんと一緒に練習したんだけどな〜」
〚そうだろうな。ここはそう簡単にはできる振りじゃない。とはいえひなたとゆうたに埋められないほどの差があるわけじゃない。焦らず確実に覚えなさい〛
俺としてはそこまで不安じゃないんだけど…
これを本番で成功させるのってかなり難しいと思うんだよね…
それにここは二人の大技だ。
アニキ一人でどうにかするものじゃない。
「すみません、“luna”さん。そこ、俺にも指導して貰ってもいいですか?」
〚やる気があってよろしい。…ふむ、少し待ってくれ。…ひなた、ゆうた。私はこっちでやらなきゃ行けないことが出来た。私が戻るまで自分たちで踊れない部分を分析しておいてくれ〛
それだけ言うと“luna”さんは画面からフェードアウトしてしまった。
ミュートにしているのかこちらから呼びかけても返事はなく、言われた通りにする以外の手はない。
二人で意見を言い合いながら改善できそうなところを探していく。
そうして三十分近く意見交換をしていると不意に『失礼』と声が聞こえた。
画面の方に顔を向けると“luna”さんの姿が見えたので、二人で画面の前に向かう。
〚こっちで少しトラブルがあってその対応をしていた。しばらく席を外していてすまなかった〛
「いえいえ。俺たちも自分たちも踊りを振り返るいい時間でしたし、忙しい中こうしてレッスンの時間を取っていただけてありがたいです」
「ところでそのトラブルって…?」
「ちょっとアニキ!」