第3章 レッスン
それ以降は二人だけのレッスンがほとんどだった。
"luna"さんも忙しく、なかなか時間が取れないということで
最初の一回きり未だレッスンを受けられていない。
それ自体は俺たちも予想していたので特に何とも思わなかったが
もう新曲お披露目間近だというのに細かい部分の指導を受けられていないのは不安が勝つ。
その不安に比例するように俺たちの練習時間は伸びていき
"プロデューサー"さんがすごく心配している。
今日もいつも通りアニキとあれこれ言いながらレッスンしていると
控えめに扉が開いて"プロデューサー"さんが顔を覗かせた。
「あれ、どうしたの"プロデューサー"。もしかして使用時間過ぎてた?」
「いやそういうわけじゃないんだけど、ちょっと二人に見てもらいたいものがあって…」
「見てもらいたいもの?いいですよ、ちょうど休憩しようとしてたところですし」
そう言うと"プロデューサー"さんが俺らに向かって見せてきたのは
普段から仕事に使っているノートパソコンだった。
不思議に思いながら画面をのぞき込むと映っていたのは"luna"さん。
〚久しぶりだな〛
「えっなにこれビデオ通話?」
〚なんだ二人とも知らないのか。君たちのところの"プロデューサー"から最近レッスンの時間が伸びていて心配だ、と連絡を受けてな。レッスンをつけてほしいと頼まれたのだが、生憎私は今日本にいなくてな〛
「つまり、国際電話ってことですか!?」
〚ああ。しかし気にするところが面白いなお前たちは〛
「俺たちも"プロデューサー"に心配かけてるのは知ってたけどそれが何で"luna"さんとのビデオ通話になるの?」
〚私は日本にいないだけだ。今の時代オンラインでもレッスンはできるだろう?〛
「なるほど。確かに不可能ではないですね」
「じゃあ時間も勿体ないし早速はじめよーう!」
最初に一通り踊ってみせると〚形にはなったな〛と言われた。
それはつまりまだお客さんの前で披露できるレベルではないということだ。
単純なミスや微妙な立ち位置のズレ、視線から指先まで細かい部分の指摘を受けた。
その指摘のすべてが的確で俺たちがまだまだ未熟だと実感させられるものばかり。