第17章 甘い熱
夕飯時に迎えに来てくれた八戒と一緒に宿の入り口に向かえばそこにはすでにほかの三人は集まっていた。
「…よ、」
「ん…」
「おっせぇよ!!二人とも」
「ごめんね?」
「つぅかよ、お前が来てからまだ数分しかたってねぇけど?」
「その少しで腹へるっつぅの!」
「うるせぇな…」
「三蔵ぉぉぉ!!」
「なついてんじゃねぇよ!」
そうしてにぎやかなまま食堂に向かう。
「…いーねぇ、久しぶりにみんなで食事っ!」
「思ってもねぇことぬかすな、気持ちわりぃ」
「…めーし!めーし!!」
「どれにすっかなぁ」
「…えーと」
口にすること、思う事はそれぞれ過ぎる一行の会話もいつも通りで何も変わらない。ただ、一つ、この日に限って悟浄が一切女性をナンパすることがなかったこと以外は何も変わらないのだった。
「…にしても、珍しいですね、あなたがナンパの『ナ』の字も出さないのは…」
「明日雪でも降るんじゃねぇか?」
「やめてくださいよ、そういう縁起でもないこと言うの」
「でもさ!悟浄がナンパしないって事はこの後何か用事でもあんじゃねぇの?」
「…ッッ…げほ」
「理世?!どうかした?!」
「なんでも…ない」
そんな理世の様子を見て悟浄もクスクスと笑っている。そんなやり取りを見て三蔵と八戒は確信を突いたのだろう。
「…ほどほどにしとけよ?」
「ぁあ?なぁんの事?」
「貴様の心配なんざしてねぇよ」
「そーですか」
「…フン」
そうして夕食も終わり、一斉に宿に戻っていく。
「んじゃ、また明日なぁ?」
「とりあえず、はおやすみなさい」
「おやすみー!!」
「…」
三蔵が返事をしないのも通常運転。それでも皆がそれぞれの部屋に入っていく。
「…悟浄?先にお風呂入ってくる?」
「いんや、先にいいぜ?」
「でも」
「…なら、一緒に入る?」
「先入ってくる。」
「だぁから、決断はえぇっつぅの」
そそっと入りに向かう理世の背中を見て悟浄は小さくため息を吐いた。