第16章 続く沈黙
「悪いな、女の子のその手の話は覚えてる方なのよ。俺」
「…モテ男だからね…悟浄は…」
「でもよ?不思議だぜ?」
「何が…」
「昨日もその前の子の事も、もう忘れかけてる」
「…言ってる事チグハグすぎる…ッ…覚えてるんでしょ?慰めだけでそういうのやめてほしい」
「…慰めてるつもりはねぇんだけどよ?」
「…だって」
「とりあえず、だ。理世にあんなこと言われたら忘れらんねぇよって事」
「…どういう意味よ…」
「さぁ、俺にも分かんねぇわ」
久しぶりの悟浄の腕の中にいる…ただそれだけで理世の思考はフル回転しているようで鈍足だった。そんな時だ。
コンコン
「はーいよ」
ノックと同時に悟浄の腕はするっと離れていく。
「…おはようございます。今から朝食に行きますが…」
「おう、りょーかい」
「理世も、おはようございます」
「おはよ…!八戒!」
にこりと笑いながらも八戒は扉を閉めた。
「…んじゃ、行きますか」
「…ん」
「そうだ、理世?」
「な…・・ン」
言葉を遮る様に悟浄は軽く触れるだけのキスを落とした。
「…俺からの予約な?」
「…ッッ…ばか…」
「どっちがだよ」
そう言い残して最後の支度を終える。理世は心の中で『誰にでもしてる事…』とそう言い聞かせるほかなかった。