第16章 続く沈黙
「…何、今から俺着替えるんだけど?」
「・・・ッッ…あの…」
「…何」
「今日…帰ってきて…」
「昨日も帰ってきてるけど?」
「…そうじゃなくて…」
「…ん?」
背中から巻き付いている理世の腕を振りほどく事もしないままに悟浄はよっと背中を伸ばす。
「…悟浄と…居たい」
「今でも居てるし、それに夜には戻ってくるだろうが」
「そうじゃなくて…ッッ…」
距離の詰め方がもうわからない…そう感じている理世だったものの、悟浄は体の向きを変えて顎を持ち上げる。
「…それって、夜のお誘いの事?」
「・・ッッ…」
「どうなの?」
「……ぅよ…」
「ん?」
「そうよ…」
「…オーケー、解った」
そうしてにっと笑うと体を離す。
「…悟浄…」
「ん?」
「…ごめん…重たい…よね」
「んぁ?何が?」
「だから…セフレだって…解ってる…」
「…おい」
「解ってるのに…・・こうして…体だけだって…解ってるのに…この間とか…昨日の夜みたいに、誰かを抱いて帰ってきたりっていうの…ちょっと…やだ」
「束縛?」
「…ごめ…ッッ…そんなつもりじゃない…」
体をぐっと離して、俯く理世。そんな相手を抱きしめるでもなく、悟浄は上から見下ろして再度聞いた。
「…俺、言ってるよな」
「知ってるよ…だから私が勝手にイラついて…寂しくなって…それだけで…忘れて…さっきの…」
背中を向けて少し離れる理世の背中から悟浄は優しく抱きしめた。