第16章 続く沈黙
夕飯の時にも悟浄は相変わらず戻ってこない。夜になってキーを持っているはずにも関わらず、戻ってくる気配がない。
「…ばか…」
呟くもののその声が聞こえることも無い。すやっと眠りにつくもののどこか深く眠りにつくことはできなかった。
カチャリ…
どれくらい時間がたったころか…静かすぎる部屋に小さく響くカギを開ける音がする。
「…」
声をかけることも、かけられることも無いままにギシりとベッドが音を立てる。
「…(おそいよ…)」
時計を月明りで見れば時刻は二時半を回っていた。そこから眠りにつき、寂しさを抱えたまま、夜が明けるころにはいつの間にか眠りについいていたことに理世自身気づいたのだった。
「…あ、れ?」
目覚めた時には隣にあるはずの姿がない。
「…悟浄…?」
しかしよくよく耳を澄ませばシャワーの水音が聞こえてきていた。
「…シャワー、か…」
変な緊張が理世を襲う。これから抱かれるわけでもない。そんな事は期待してはダメ…そんな風に思っていたにも関わらず、ガチャリと開く浴室の扉の音一つにもドクリと胸を高鳴らせた。
「…お…起きてた?」
「ん、おはよ…」
「おはよ。」
「……昨日、遅かったんだね」
「あぁ、まーね」
「……そか…」
上半身裸のままの悟浄。髪を拭きながら自身のベッドにどさっと座る。
「…悟浄…」
「ん?」
「……」
「何?」
「…あの…」
「なんだよ」
「昨日は…ごめん」
「何が?」
「・・その、怒鳴ったり…ほっとけとか…」
「あー、別にいいよ、んな事」
突き放されるような言い方をされるのは初めての事だった。あらかた髪を拭き終わったのだろう。服を着るのに立ち上がり、背中を向けて着替えを取ろうとした時だ。