第16章 続く沈黙
「どっちにしても私は怒ってもないし、不機嫌でもない…だから気にしないで?」
「…そうかよ」
「ん」
「……じゃぁなんで寝れねぇの」
「野宿だから?」
「意味分かんね」
「だって…」
「いつもだって寝てんだろうが…」
「…だけど…」
「だけど…何?」
「……もう大丈夫…」
引き返そうとする理世の手をきゅっと握り、引き留める悟浄。
「…待てって…」
「…ッッ」
「泣きそうなの、勘弁してくれよ…」
「泣いてない」
「泣いてねぇかもしれねぇけど…」
「泣く事もない!」
「……」
掴まれた手を振りほどくようにして理世は先に三人のもとに戻り、ふて寝に近い状態で眠りについた。
「…んだってんだよ…」
イライラにも似た気持ちを抱いたまま、悟浄も野営のもとに戻っていくのだった。
***
翌朝、不機嫌なのが二人に増えたジープの上、そのまま街に向かっていく。
いつもと同じように昼過ぎについた時にはまず食事をとる。そして宿屋に向かって荷物を置く。
シングル一部屋にツインが二部屋…どこかで見た光景だった。
「…どうしますか?」
「どこでもいーわ」
「……私ここ」
「フン…」
あたり前のようにシングルを取る三蔵。加えて理世も珍しく先に取った。
「…では」
そうして悟浄に理世と同室となるキーを渡す八戒。
「…あいよ」
「行きましょう?悟空」
「あぁ」
「・・・んじゃ」
そのまま部屋に入ることも無いままに悟浄は宿を後にしていく。
「…また、か」
同じ部屋なのに、何も起こらない。というよりもきっと怒らせたのは私自身かもしれない…そう理世は思い出していた。