第14章 触れない距離
そして別のホテルを出て悟浄も宿に戻っていく。
「…あ」
「おや、あなたも花火でしたか?」
「んー、まぁそんなとこ」
横に並ぶ理世はちらりと悟浄の顔を盗み見見る。
「ん?どうした?」
「…べっつにぃ」
「なんだよ…」
「…・・・お盛んな事で」
「……どーも」
そんな話をしながらも五人はエレベータに乗り込む。先に悟浄と理世は降りれば、お休みと三人に挨拶をする。
「…なんか…気まずい」
「なんでよ…」
「あんま意味なかったって感じだね」
「何が?」
「…べつに?なんでもない、じゃぁお休み」
そうしてひらひらと手を振って理世は部屋に入っていく。
「…なんで怒ってんだ?」
そう呟く悟浄の声はすでに部屋に入っている理世には聞こえなかった…
***
部屋に入った直後、ドアにもたれて座り込んでしまった理世。
「…最悪…あんな怒り方して…」
悟浄と会った時に香ってきたのはいつもでは香らない香水の香りだった。それに気付くまでにそれほど時間はかからなかった理世だったものの、嫌み満点にあぁいうしかできなかった。
「…絶っっ対重たい女だって思われた…」
ただのセフレ、それ以上でも以下でもない。
キスマーク一つで悟浄のクセを、あの人の魅力を止める事なんてできないのは重々分かっていたのに…
だから他に抱く人がいても怒るのなんてお門違いなのに…それなのに口から出てきたのは心にも思っていない位に冷たくも嫌みしかないものだった。
「…もぉ…・・やだ…」
そう呟いてきゅっと膝を抱えている。ふらふらと立ち上がればベッドにボスっと倒れこむ様にして眠りにつくのだった。