第14章 触れない距離
そんなやり取りをしている、一方の悟浄…
「ねぇ、悟浄?本当にいいの?」
「んー?するんだろ?来いよ」
「本当に、私…でいいの?」
「あぁ、」
「…キスして?」
そう誘われていた。しかしにっと笑うだけで悟浄はキスをしようとしなかった。
「…悟浄?」
「ん?どうした?」
「キス…したい…」
「いいよ?して」
「悟浄…からはしてくれないの?」
「んー、キスだけは俺からしない主義なんよ」
「…じゃぁ…」
そう言って女性はキスを交わす。それを受け入れる悟浄だったものの、少し離れても悟浄からはしなかった。そのまま押し倒せばゆっくりと唇を這わせる。
「…ンァ…悟浄…」
「かーわい…」
「ンン…」
そうして何の感情も持てぬままに悟浄はナンパした女性と情事を終えていく。
「…しっかりつけるのつけるのね」
「そりゃ、当然デショ」
「私…悟浄との子供ならよかったのに…」
「つっても俺明日にはこの街でっからよ」
「…そうなのね…一晩だけ、って事」
「ん、そうなるな」
ドォーーン…
「明るいな」
「花火っていうの。このあたりじゃ珍しいのよ?今日はお祭りだって」
「そうなんだ」
そう話している間に悟浄は煙草に火を点けた。
「…んもぉ…」
すっと取り上げれば女性も一緒に煙草を咥える。
「…吸うの?」
「前に少しだけ吸ったことあるのよ。最近は吸ってなかったわ」
「そりゃまた…」
「悟浄、あなたみたいにイイ男の人は、あまり見かけないから…」
「…結構あんたも遊んでる感じ?」
「遊んでるって事はないけど…」
「いいんだけどよ」
灰皿にグッと押し付けてもみ消せば、まだ煙草の余韻残るままに女性からキスを重ねてきた。
「…ン…」
「応えても…くれないのね…」
「なぁにが?」
「あなたからキスする女性っているのかしら」
「どうだろうねぇ…」
「次の街もいないこと願うわ?」
「どうしてよ」
「私だけって思いたくないから」
そう話せばすり寄る様に、女性は悟浄の胸に顔を埋めた。そっとそんな相手の背中を抱き寄せるのだった。