第15章 それぞれの思い
♢ Side 理世 ♢
もう…なんでこんな風に怒れてるのか…それすらもわからない…自分は悟浄にとってただのセフレであり、恋人なんかじゃない…だから、どこの誰と肌を重ねようと問題もないし、ましてやその行為に関して束縛なんてできないし…
もちろんそんな事は十分解ってた。
付き合うとかはもしかしたらできるかなとも思ったけど、それでも『愛には溺れねぇ』と聞いたあの日からそれは叶わぬ夢物語だと…
それでも自分の事を抱いてくれる…
キスして、抱きしめてくれて…
いつの間にか特別な存在になれてるのかもしれない…そう思ってた。
そんなわけないのに…
「…これじゃ…三蔵の言ったとおりだ」
特別になんてなれる訳ないって…解ってたはずなのに…それなのに…特別だって思い込んでたのは私だけ…
他の女の人の香水を纏って帰ってくるたびにこんな思いになるなら…もうセフレはやめた方がいい…そう思ってるのに…
悟浄の体を知って…
悟浄の温もりを感じてしまって…
悟浄のキスが…ほしくなる…
こんなに溺れてしまってるのは私だけ…自分の変わりは悟浄にとってはいくらでもいる。
「解ってる…悟浄ぉ…」
解ってるのに…頭と心が食い違ってる。いつも…隣にいてくれるわけじゃないのに…
もう今からでもすぐに悟浄のもとに行きたいのに…あなたは今夜はきっと…もう疲れているはずだから…抱き合って眠るだけでも構わないのに…
忘れようとするのに吐き出してしまった言葉は取り返せなくて・・・寂しさなんか表に出せないのに…
「重たい女だね…私…」
どれ位ぶりだろう…こんな風に誰かを想って泣く日が来るなんて…成長なのか退化なのか…もうわからない…・・・