第14章 触れない距離
そして翌日、悟浄は理世の眠るベッドの淵で眠ってしまっていた。
「…ごじょ…?」
「ン…あ、起きたか?」
「ごめんね?」
「なぁにが…」
体制を直しながらも悟浄は前髪を掻きあげた。
「…ありがと…」
「だから、…何が?」
「ずっとそばにいてくれたんでしょ…?」
「あー、それはそうなんだけどよ?」
そう話しながらも理世の額にすっと手を乗せれば口元が緩んだ。
「…よかった、熱、だいぶ下がってんな」
「…そうみたい、体も昨日より楽だし」
「そか。」
ベッドの淵に座れば悟浄の肩にこつっともたれる理世。
「…そうだ、三蔵と八戒に礼、言っとけな?」
「え?二人に、……あ、迷惑かけちゃったしね…」
「違う」
そう返事をすればそっと背中に腕を回した悟浄。ゆっくりと優しく抱きしめれば、話し出す。
「…そこの薬、三蔵からだし、八戒が治癒で力入れてくれた。だから回復も早ぇのよ。俺はここにいただけだ…」
「…そうだったんだ…」
「あぁ」
「あ、今日出発なんだよね…準備しないと…」
「延期だ」
「へ?」
「明日にすると。よかったな、今日はゆっくり休め」
「・・そんな事、できないよ」
「ぁ?」
「三蔵のとこ行って…今日で大丈夫って伝えなきゃ…」
「あんなぁ…」
ゆっくりと体を離せば顔を覗き込むようにして悟浄は視線を合わせる。
「…昨日まで飯すら食えなかった奴が気にするところじゃねぇって…だろ?」
「そうかもしれないけど…でも…」
「でもじゃねぇ。迷惑かけたっつぅならちゃんと今日一日しっかり食って明日に備えろ」
「…わかった…でも…三蔵たちにお礼言わないと…」
「なら食事の時に言えばいいだろ」
「そうだね…」
そう話している時だった。