第13章 苦いクスリ
こうして三蔵にもらった鍵で中に入り、理世の状況を飲み込んだ悟浄。そのままベッド脇に腰かけようとするものの、一瞬躊躇い、椅子を引き寄せて近くで見守る様に座っていた。
「…つか…看病なんて慣れてねぇし…」
そう、小さい時から看病なんて慣れてもない…病気の時でも近くにいたのは…
「…兄貴だけだったな…」
そう呟く悟浄。だからと言って無理をさせて良いワケがない。
「…悪かったな…」
椅子から降り、ベッドにギシりと乗れば額に張り付く髪を避けてやる。
「…どうしてやればいいかわからねぇなんて…情けねぇ…」
そんな時だ。小さく身じろいでゆっくりと瞼が上がる。
「…ごじょ…?」
「起きたか?」
「…どうして…ここ…」
「安心しろ、なんもしちゃいねぇよ。」
「…じゃなくて…どうして…部屋…締めてたのに…」
「三蔵が開けてもらったんだと。んで俺んとこに来たってワケ」
「……そか…今…何時…?」
「今か?…もうじき二十時だな」
「…お夕飯…食べた?」
「あぁ、で、そこに理世がこないからって…」
「ハハ…ごめん…」
「……」
「悟浄?」
「…・・ん?」
「なんで…泣きそうなの?」
そういわれる理世の目は熱のせいだろう、少しばかり潤んでいた。
「…泣いてねぇよ」
「泣いてないけど…」
ゆっくりと体を起こせば理世は悟浄の頬に手をやる。
「…ほら…すごく辛そう…何かあった?」
「…何かって…んなの…」
『理世が熱出したから…』そう続けたかったものの、悟浄はその言葉を飲み込んだ。代わりに、と優しく抱きしめる。
「…こんな体熱くなって…悪かったな…無理させて…」
「んーん」
「…ソコは肯定してくれよ」
「だって…悟浄だけが悪いわけじゃない…」
「昼んときからか?」
「…少し食欲無くて…って、熱出る前だったとは…」
「…ほら…」
そう言って悟浄はゆっくりと背中に腕を回しながらも横たわらせる。
「…薬、飲むか?」
「でも何も食べてないし…」
「そうだな…確かに…何か食える?」
「今はいー、ありがと…」
「欲しいのは?」
「…手、」
「て?」
「ん…繋いでて…?寝るまででいいから…」
「…わかった。
そう返事をして悟浄はきゅっと握りしめた。