第11章 心、狂わせて…
その頃の三人はといえば、悟空が食べ過ぎにより一旦手洗いに離席している間、八戒がどことなく心配していた。
「…にしても…」
「ぁあ?なんだ」
「本当に理世が悟浄と、とは…」
「やっぱり気づいていたんだな」
「やっぱりって…人聞きの悪い…」
「だってそうだろうが。」
「あれだけ『何もない』と言われましても…彼女に似合わない程の煙草の、しかもあなたのものではないとしたら悟浄でしょう?」
「似合わない、か」
「おや?」
「…なんだ」
「そうは思いませんか?」
「…俺もそこに関しては同感だ。ただ…」
「ただ?」
「体だけの関係、だそうだ」
三蔵から思いがけない言葉を聞いた八戒は思わず食べ物を吐き出しそうになった。
「…ま、待ってください…それって…」
「間違いねぇよ。本人に聞いた。」
「本人って…理世ですか?」
「あぁ。」
「…昨日の話って…それだったんですね」
「それ以外に何がある。」
「…それで?どうされるんですか?」
「どうもこうもねぇ。」
「…というと…?」
「置いていくとかはしねぇよ。他人事だ。」
「…他人事って…」
「でも、何かあれば手くらいは出してやる。」
「珍しい」
「おそらく、理世からはほぼ言ってこねぇだろうがな」
「言いにくいのでは?」
「そんな事はねぇよ。だけど基本はあのバカに責任は負わせる。」
「…なるほど」
そんな話もいったんキリが着いた頃。
「…はぁあぁ!すっげぇでた!」
「恥ずかしいですよ、悟空」
「わり!」
「何考えてんだ、てめぇは」
「わりぃって!でも、本当に悟浄も理世もこねぇのな…悟浄は女のところだとしても理世、大丈夫だったのかな…飯食わねぇで…」
「大丈夫ですよ。ね、三蔵」
「知らん」
「三蔵ひっでぇな、心配じゃねぇの?」
「おそらく三蔵は理世の居場所を知ってるから、ですよ」
「え、そうなの?なら大丈夫か!三蔵が走っていかないなら!」
「どんな基準だ」
そんなことを話しながらも三人だけの朝食も終わっていくのだった。