第8章 温もりを求めて
理世は椅子に座る悟浄に、クスクスと笑いながらも荷物から煙草を取り出して手渡した。
「…あ、そうそう。これ、さっき八戒と買い物行ったときについでに買ってきた。三蔵に頼まれてたのとついでに」
「あー、わり。」
「ちょっと待ってて?」
「んー?」
「髪、乾かしてくる」
そういうと理世は悟浄の前を通り過ぎ、浴室側に向かっていく。ドライヤーのスイッチを入れればしっかりと髪に風を当てて、乾かしていく。
カチッとスイッチを切り、ブラッシングし始めた時だ。
「理世、すっげぇいい匂い…」
「んー?二日ぶりのお風呂先に入っちゃったからかな?それに香りのいいシャンプーついでに買ってもらっちゃって…」
「そか、」
「それで?天下の悟浄サマが何でフラれたの?」
「煙草、吸ったらいきなり不機嫌になってひっぱたかれた」
「嫌いだったんだね、その人。聞かなかったの?」
「あぁ、聞いたことねぇわ」
「クスクス…いい勉強になったね」
「…だな」
そういうと後ろからトン…と凭れるようにして悟浄は理世を抱きしめた。
「…で、理世は平気?」
「クスクス…いやだったらあんなの買ってこないよ」
「それもそっか…」
「…ごめ…ちょっと…離れてほしい…」
「なぁんでよ」
「…そりゃ…その…・・わかるでしょ?」
「分かんねぇな」
少し怪しげな笑みを浮かべながらも悟浄はくるりと体の向きを反転させ、洗面台に座らせた。
「…濡れてたらどうするのよ」
「んー?そうしたら脱がしちまうだけだ」
「…ひどくない?入ったばっかだって言ったよ?私」
「…知ってる。聞いたっつぅの」
「・・なんか近い…」
「…今からキスすんだから、近くもなるぜ?」
洗面台に手をついてゆっくりと顔を近づけてくる悟浄。よけることもせずに、理世はそのキスを受け入れた。
「…ン…」
「ここがいい?それとも…どうする?」
「・・・ベッドが…いい」
「…ん」
そう短く返事をすれば悟浄はそのまま抱き上げてベッドに連れて行った。