第8章 温もりを求めて
宿に着けば、悟浄の分のハイライトと、理世の買い物分を渡してそれぞれの部屋に戻っていった。
「…これ…効くかな…」
そうして食事の前に…とお風呂に入ることにした。髪を濡らし、シャンプーを手に取ればふわりと浴室に甘い香りが広がる。
「…いい香り…」
久しぶりのスウィートフローラルの香りに息をすぅ…っと大きく吸い込んだ理世。しっかりと洗い、トリートメントも付けた。
「…つるつるだ…こんなに変わるんだ…」
そう呟きながらもゆったりと湯船につかる。二日ぶりの入浴にのんびりとした時間を過ごして居た。
「…はぁ…」
少しだけ視線を下ろせばまだ色濃く残るキスマークに触れる。
「…ごじょ…ぉ…」
何もなかったといったものの、唇には昨夜のキスがまだはっきりと残っている。考えただけでのぼせてきそうになった理世はざばっと浴槽から出て、服を着替える。
「…もぉ・・変なことばっかり考える…」
自覚はあるものの、なぜだが不思議と落ち着いていた。
「…ごじょ…ッッ!?」
ぽそっと呟いた時、ドンドン…っと扉をたたく音がした。
「…はい?」
『あー、俺』
のぞき窓からのぞけばその相手がいた。ゆっくりと扉を開ければ『よっ』とあいさつをされる。
「…どうかした?」
「んー…?」
「…・・振られた?」
「なぁんでよ」
「だって、頬っぺた赤いから」
「……大正解」
そういうとするっと入り込む悟浄と自然と中に入れた理世がいた。