第46章 再会
「波珊?ごめんね?今手が離せなくて…青藍が焦ってるみたいだから話聞いてあげてくれる?」
「…クス…ひっでぇなぁ」
その一言を聞いて理世の手はぴたりと止まった。
「…ぅ…そ」
その声はずっと聞きたかった声…会いたくて…聞きたくて…仕方のない声だったものの、理世は振り返ることが出来ずにいた。コツ…コツ…と足音だけが近づいて来る中で視界が涙で歪んでいくのが解った。
すぐ後ろに気配を感じればふわりと包み込まれるその腕。さらりと頬にかかってくる緋色の髪…
「帰って来て早々に他の男と間違えるってなぁ…」
「…ッッ…だって…」
「だって、…なんだよ。ん?」
「ご…じょ…ぉ…」
「ただいま」
両手で顔を隠し、涙があふれて止まらない。その腕に包まれる温もりも、腕の強さも、ハイライトの香りさえ…
あの時、別れた日から何も変わってはいなかった…
「…悟浄…ぉ」
「ん?」
「まって…ッッ…今無理…」
「無理とか聞いてねぇよ」
「…だって…」
「顔、見てぇって思ってるのは俺だけ?」
「…ッッ」
ゆっくりと肩を引かれて向き合えば俯く理世の頬を包み込んで悟浄はゆっくりと顔を持ち上げた。
「…ッッ」
「どう?幻?」
「…ちが…ッ」
「それはそうと、理世は言ってくれねぇの?」
「…ッ」
「ただいま、理世」
もう一度悟浄は視線を合わせてゆっくりと、確かに伝えた。
「…お帰り…なさい…ッ」
そういうのが精いっぱいの理世だった。背伸びをしてぎゅっと首に巻き付いた理世の背中に腕を回して悟浄もまた、抱きしめ返すのだった。