第36章 別れの時
夕飯近くになってようやく姿を現した二人。
「…あーー!!理世!」
「悟空…」
「ハァ…全く…」
「わり…時間忘れてたわ…」
「忘れてたって時間ではないと思うのですがね?」
「触れれば触れるだけ別れられなくなるって解らねぇのか…」
「その逆だ、」
「…ぁあ?」
「何も形として残せねぇからよ…」
そう話しながらも八戒や悟空に取り囲まれている理世の姿を見つめる悟浄。
「…お前は良くても、残される理世はどうなる」
「残したまま帰らねぇなんてことにはしねぇよ」
「出来ねぇかもしれねぇ約束、したんじゃねぇだろうな…」
「出来ねぇさ…でも、理世が…あいつが待っててくれるってだけで俺は生き延びれそうなんだわ」
「…バカだろ」
「…なんとでも言えよ。」
「…ハァ…」
「どっちにしても、お前だってただで死んではやらねぇんだろ?」
「…何がだ」
「奪われたもんを奪い返してよ?生きて帰るんだろ?」
「当然だろうが」
「同じな訳よ、俺もよ」
「お前は理世ありきの命だろうが」
「いいんじゃね?そういうのもよ」
フッと笑う悟浄。理世を見つめる目が一段と優しくなっているのを見て三蔵も視線こそ合わせないものの、口角をあげて小さく笑った。
「…変わったな…貴様も」
「んぁ?何、きもちわりぃ」
「…なんでもねぇよ」
そう言い合っていた。
夕食は五人で一緒に食べることにする。雑魚寝にも似た状態で五人で同じ部屋に寝る事にするものの、狭いだの、あっち行けだの…最後の夜に似つかわしくもないような騒ぎで夜を過ごすのだった。