第36章 別れの時
それから翌日の朝…朝食にと向かおうとする中でも悟浄と理世の姿は見えなかった。
「…解ってはいましたが…」
「…フン…」
「なぁなぁ…悟浄と理世は?悟浄はともかくさ、理世とはもうちょっとしかいられないじゃん?」
「…それもそうなんですよね…」
「だからこそなんだろう」
「…三蔵…?」
「今のままじゃ…離れる決断しても離れきれねぇんだろ」
「…なんか…三蔵…」
「ぁあ?」
「人間っぽいな…」
「喧嘩売ってんのか…貴様…」
「だってよ!今までそんな風に言わなかったじゃねぇか」
「それもそうですね」
「…チ…」
「でもそれってすごくいい事だと思いますよ?」
そう八戒に言われながらも朝食を摂りに向かう。その後の昼食にも参加しなかった二人。
「…なぁんか、こんなこといつだったかもありましたねぇ…」
「そうだな…なんか…悟浄と理世が少し離れたりした後とかってこういう事多いよな…」
「だからと言って抱きすぎだろ…」
「抱き?…え、何、三蔵」
「いや、…いい…」
半ば呆れながらも時間だけが過ぎていく。その時だ。
「…あ、どうやら来たみたいですね…」
「解りやすい奴らだ…」
そう口々に言いながらも広場に出れば思った通りだった。
「…よう、玄奘」
「あぁ、」
「コレ、明日から上るってなら町出る少し前に飲めば聞くぜ?…って、理世と悟浄って言ったか…二人は?」
「いえ、それが…」
そう八戒の言葉を詰まらせたことで、沙烙はピンと勘づいた。
「…まぁ、お前らも大変だな…」
「別に、今始まった事じゃねぇよ」
「…そうなのか?」
「えぇ。情事がない夜の方が珍しい位です」
「…体力、ありそうだな…」
「ただ単に甘やかされてる可能性もありますがね?」
そう笑う八戒の顔を見ながらも沙烙はそうか、と呟くだけだった。