第35章 もう一人の三蔵
前に回る腕にそっと触れながらも理世はどうしようもなくなってきたのだろう…悟浄の腕にもぽたぽたと水が落ちてくる…
「理世…」
「悟浄…ぉ…ずっと…いたかった…悟浄の横に…」
「離れなくてもいいって言いてぇけど…そうもいかねぇんだよ…」
「…ッッ…解ってる…」
「これじゃ…この先思いやられるぜ?」
「…ッッ」
「離れてすぐに恋しくなったりしてな」
「いつも…そうだよ…」
腕が少し緩んだ時に理世は体の向きを変えて悟浄の背中に腕を回した。
「…なんか…変な気持ち…」
「ん?どうかしたか?」
「…悟浄の事…忘れない様にって抱いてほしいのに…なんか…嫌だなって思ったり…」
「ん?どうしてよ」
「…だって…いつもは抱かれた後に眠っても…まだ翌日もあるし…今度もあるからって…」
「…ッ」
キュッと巻き付く腕に力がこもる。
「…悟浄と離れたくない…のに…離れた後の寂しさが怖くて…」
「…忘れねぇように刻んでやれたらいいのにな…」
「ッ…悟浄…」
「ん…」
ゆっくりと体を離せばゆっくりと体をかがめて唇を重ねた。
「…離さないで…」
「離さねぇよ…」
そう言えば悟浄はグッと抱き上げてベッドに連れていく。シングルよりは多少広めのベッド…そんな中で悟浄はゆっくりと、いつも以上に時間をかけながらも理世の事を腕に抱く…もう幾度も抱けないと知りながらも、ただ、今は…今だけは相手の傍で愛おしい人の温もりだけを感じていたい…そう願いながらも…