第34章 デジャブ
♢Side 三蔵 ♢
何かの間違いかとも思った…
あの言葉は…あの、考えは…
『江流?信じる者は己だけですよ』
『何者にもとらわれず、縛られず、ただあるがままに己を生きる事…それが人としての生きる意味ではないでしょうか?』
『帰る場所があるのが本当の自由って事ですよ。』
お師匠様が…言っていた言葉と同じだったから…聞き間違いでもない…恐らく土地としてもお師匠様がここに来たことはないはずだ。となれば…
この女の考えって事か…
さっきから見上げてくる視線にも迷いの揺らぎはない…まっすぐに俺の事を見てきやがる…それと同じように悟浄や悟空はもちろん、あの警戒心の塊のような八戒の心にですらいつの間にかこの短時間でするりと入り込んでいきやがる…
「ねぇ、三蔵…」
「いつの間に呼び捨てにしてんだよ」
「…だって…三蔵さんって…舌嚙みそうで」
「噛んでろ、そして死ね」
「ひどくない?」
「……俺たちについて来ると言う事は死が隣り合わせだ。死ぬのが嫌ならついて来るな」
「…着いて行って死ぬのと、自決は全く意味が違いますけど?」
「たっしかに!!」
周りが同意してきやがる…足手まといが増えるだけ…そのはずだった。
誰が守るのかなんて言われれば俺に振ってきやがる…足止め食らってる暇ねぇのに…
ただ、それでもどこか似ていたのかもしれない…時折細める目、その見据える方向…口癖、それに…時折見せる甘ったるいほどの無防備な笑み…
「…ハッ…連れて行けって事かよ…」
ぽつりと無意識に吐いた言葉は誰にも聞かれていなかったが…最後に理世に言われた…
「…お願い、連れてって…?」
その一言に俺はいつの間にか『勝手にしろ』と答えていたんだ…