第33章 現れた刻印
二人が出て行った部屋には少しばかり沈黙が落ちていた。それを破ったのは他の誰でもなく、理世だった。
「…ねぇ悟浄?」
「んー…」
「私ね?本当に悟浄になら殺さ『理世』…え?」
珍しく悟浄が理世の言葉を遮った。
「…俺はよ?暴走して理世の事手にかける位なら離れた方がいいと思ってる。」
「悟浄…?」
「考えてもみろよ。理世なら俺の事、殺せるか?」
そう聞かれて一瞬息をのんだ理世だった。
「…な?出来ねぇだろ?」
「…ん」
「それと一緒だ。俺だって好きな奴手にはかけれねぇよ」
「…でも…」
「でもとかいらねぇんだよ。純粋に俺は、理世の事を殺したくねぇ。」
「…ッッ」
「だからよ…?」
そういえばすっと膝をついて悟浄は見上げながら小さく笑ってつづけた。
「…俺がよ、もし姿形変わって…理世の事すらわからなくなったら、殺してくんねぇかな」
「…私、が?」
「おう。つか…正確には俺の事を殺そうとする八戒を止めねぇでやってほしい」
「…どういう事…?」
「きっと、俺の事を止めるのに八戒が妖怪化すると思う。その前に俺の自我があるうちに何かしらの手を打ってくれるんだろうけど…もし間に合わなかったら殺しかねねぇと思う訳よ。」
「…そんな事…」
「長い付き合いだから分かる。」
そう言い切る悟浄の言葉に理世は何も言えなくなった。
「…もしくは三蔵が銃ぶっ放してくると思う。それであっても止めねぇでな?」
「……ッッ」
そうきいた理世はぎゅっと悟浄の首に巻き付いた。
「…大丈夫…悟浄は…大丈夫よ」
「分かんねぇんだよな。確かに今は痛くもかゆくもねぇけどよ?それこそいつどうなるかは分かんねぇんだよ」
「…ッ…悟浄…」
「少なくとも、理世と分かれる地に来るまではこのままでいてぇけどな?」
小さく笑いながら、背中に腕を回す悟浄。
「…でも、」
「何…?」
「もう抱けねぇかもしれねぇなぁ…」
「…な、んで…」
「だってよ?気持ちわりぃだろ…半妖でも半分は人間だった男が、妖怪の血が濃くなってんだぜ?」
「…ッ…」